耐震基準と築年数で家の安全性がわかる!知っておきたい基準の違いと確認方法
住宅は、人生で最も大きな買い物のひとつです。外観や間取りだけでなく、その住宅が本当に安全で快適な住まいかどうかを知るためには、目に見えない「性能」を正しく理解することが欠かせません。そんなときに役立つのが「住宅性能評価制度」です。これは、国が定めた基準に基づいて第三者機関が住宅の性能を評価し、数値や等級で“見える化”してくれる仕組みです。本記事では、住宅性能評価の概要から評価項目、取得の流れ、メリット・デメリットまで、制度の全体像を詳しく解説します。初めて住宅購入を考えている方や、信頼できる住宅を選びたい方にとって、必ず役立つ情報が満載です。
住宅性能評価とは住宅の性能を客観的に評価する公的な仕組みです
住宅性能評価ができた経緯
住宅性能評価という制度は、日本の住宅事情の転換期ともいえる1990年代後半に誕生しました。当時、多くの住宅トラブルや欠陥住宅に関する相談が増加していたことが背景にあります。新築住宅を購入したにもかかわらず、短期間で雨漏りや構造不良が発覚するなど、「見えない部分」のトラブルが社会問題となっていたのです。
こうした状況に対応するため、1999年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が制定されました。この法律の目的は、住宅の品質を確保し、消費者が安心して住宅を購入・選定できる環境を整えることです。その中核的な仕組みとして生まれたのが、住宅性能評価制度でした。
制度では、国が定めた基準に従い、第三者機関が住宅の性能を客観的に評価することが可能になりました。これにより、消費者は「住宅性能」という見えにくい要素を「見える化」された形で理解できるようになり、購入の際の判断材料が大幅に強化されたのです。
また、評価制度の導入によって、建設会社やハウスメーカーも一定の基準を満たす住宅を提供する必要が生まれ、結果的に全体の住宅品質の底上げにも寄与しました。現在では、新築住宅の約4割が何らかの住宅性能評価書を取得しており、制度は着実に根付いてきています。
このように住宅性能評価制度は、消費者を守り、住宅の品質向上を促進するために誕生した重要な公的制度なのです。
住宅性能表示制度とは何か
住宅性能表示制度は、「住宅性能評価制度」とほぼ同義であり、住宅の性能を明確に数値や等級で表示し、誰でも比較検討できるようにした制度です。簡単にいえば、住宅の性能に「ものさし」を与えた仕組みだといえるでしょう。
この制度の特徴は、性能項目が細かく分類され、国が定めた評価基準に基づいて等級をつけられる点です。評価対象となるのは、「構造の安定性」「火災時の安全性」「温熱環境」「劣化の軽減」など10項目で、それぞれに等級1〜等級3、またはそれ以上のレベルが設定されています。例えば「耐震性が等級3」と表示されていれば、現行の建築基準法を超える高い耐震性能を持っていると判断できます。
評価・表示のプロセスは、国に登録された第三者評価機関によって行われます。評価機関は中立・公正な立場で設計図面や現場の施工状況をチェックし、定められた基準に照らして評価書を作成します。これによって、設計者・施工者・購入者の間で「性能」に対する共通認識が形成され、トラブルの予防や説明責任の明確化にもつながります。
また、この制度は任意でありながら、多くの大手ハウスメーカーが導入しており、ローン審査の優遇や住宅保険の割引においても高評価物件が有利になる傾向があります。さらに、住宅性能評価書は第三者機関の証明として残るため、将来的な売却時にも信頼性の高い資料として活用可能です。
まとめると、住宅性能表示制度は、住宅選びを「感覚」ではなく「数値と根拠」に基づいた判断に導くための制度であり、安心と納得をもって住宅を選ぶための非常に有用なツールだといえます。
住宅性能評価書の評価項目
1 構造の安定
住宅における「構造の安定」とは、主に地震や風圧などの外力に対して建物がどれだけ安全性を保てるかを評価する項目です。特に日本は地震大国であり、この性能が住宅選びにおける最重要ポイントになることも少なくありません。
構造の安定性は「耐震等級」という指標によって示され、等級1〜等級3の三段階に分けられています。等級1が建築基準法レベル、等級2はその1.25倍、等級3は1.5倍の強度を持つ設計となります。たとえば等級3は、警察署や消防署などの防災拠点施設と同等の耐震性を持っているということです。
実際の評価では、建物の構造形式(木造、鉄骨造、RC造など)や、壁量、床構面の剛性、耐力壁の配置バランスなどを確認します。これらが十分に設計され、施工されていなければ、高等級の評価は得られません。
この項目で高等級を取得していれば、万が一の災害時にも建物の倒壊リスクが低く、命と財産を守る確率が高まります。地震保険の割引対象にもなることから、将来的な経済的メリットにもつながります。安心・安全な暮らしを望む方にとって、最も注目すべき評価項目の一つといえるでしょう。
2 火災時の安全
「火災時の安全」は、住宅内外で火災が発生した際の延焼防止や避難のしやすさを評価する項目です。都市部の住宅密集地では、火災による被害が拡大しやすく、命を守る上でこの性能は極めて重要です。
評価内容は、隣接住戸との「遮炎性能」や、住宅内部の「避難経路の確保」、および「火災感知器の設置状況」など多岐にわたります。たとえば、火災発生時にすぐに感知できるよう、全室に煙感知器が設置されているか、2方向以上の避難ルートが確保されているかなどが評価対象となります。
さらに、隣家との間に防火構造の壁やサッシを設けているかといった点も重要です。建物同士が近接している地域では、この遮炎性能が延焼防止に直結し、自分だけでなく周囲の家の安全にも影響を及ぼします。
評価が高ければ、万が一火災が発生した場合でも被害を最小限に抑え、迅速に避難できる環境が整っていると判断できます。小さな子どもや高齢者がいる家庭にとっては、特に注目すべき項目です。
3 劣化の軽減
住宅は長く住み続けることを前提に建てられますが、建物は経年劣化によって徐々に性能が低下していきます。「劣化の軽減」は、そうした劣化をできるだけ防ぎ、建物の寿命を延ばすための工夫や仕様を評価する項目です。
評価対象となるのは、主に構造躯体(基礎・柱・梁・床など)を中心とした部分です。具体的には、床下や屋根裏の通気性が確保されているか、雨水の侵入を防ぐための外壁・屋根の仕様、白蟻対策、防腐処理などの施工状況が評価されます。特に湿気は木造住宅にとって劣化の大敵であり、防湿シートの有無や換気口の配置もチェックポイントになります。
等級が高い住宅は、一般的な使用状態であっても数十年間にわたって構造部分の耐久性を維持できる設計が施されています。これにより、長期的なメンテナンスコストを抑えることができ、将来的なリフォーム計画も立てやすくなります。
劣化を抑える工夫がなされた住宅は、単に長く住めるだけでなく、資産価値の維持にもつながる重要な要素です。特にマイホームを「資産」として考える方にとって、この評価項目の内容は見逃せません。
4 維持管理への配慮
住宅は建てたあとも定期的な点検や設備の交換が必要です。「維持管理への配慮」は、そうした将来的なメンテナンスのしやすさや、住宅設備の更新時の利便性を評価する項目です。
具体的には、配管や電気配線、換気ダクトなどの位置とメンテナンスのしやすさ、点検口の有無やアクセスの容易さなどがチェックされます。たとえば、床下点検口や天井点検口が適切な場所に配置されているかどうか、水道や電気の配管ルートが無理のない設計になっているかなどです。
この評価項目は、今すぐの利便性よりも「将来の安心」を支える要素といえます。例えば給排水管が寿命を迎えた場合、壁や床を壊さずに交換できる構造であれば、工事費用も抑えられ、生活への支障も最小限です。逆に維持管理が難しい住宅は、修繕のたびに大きなコストと手間が発生する可能性があります。
また、この項目で高い評価を受けている住宅は、将来的な売却時にも「メンテナンス性が高い住宅」としてプラス評価を受けやすく、資産価値にも好影響を与えるでしょう。
住宅性能評価を受けることで得られるメリットと注意点
メリット:住宅購入の安心材料になる
住宅は人生で最も大きな買い物といっても過言ではありません。購入後に後悔しないためには、その住宅が「本当に安全で快適な住まいか」を見極めることが重要です。ここで役立つのが住宅性能評価です。
住宅性能評価を受けた住宅は、国の基準に沿って第三者機関が性能を確認し、「見える化」された状態で提示されています。評価項目ごとに等級が示されているため、素人でも住宅の質を客観的に判断しやすくなります。たとえば「耐震等級3」や「劣化対策等級3」といった情報があれば、その家が高水準の安全性と長寿命性を備えていると一目でわかります。
また、住宅ローンを組む際にも評価書は有利に働く場合があります。一部の金融機関では、評価書付きの住宅に対して金利の優遇や審査の簡素化といった特典が用意されているケースもあります。加えて、地震保険料が割引になるといった経済的メリットも見逃せません。
さらに、評価書は将来的な売却時にも役立ちます。買主にとって性能の証明がある住宅は安心材料となり、他の物件との差別化要因になります。特に中古住宅市場では、品質を証明する情報が少ない中で、評価書があることは大きなアドバンテージとなるのです。
つまり、住宅性能評価は購入者にとって「信頼できる住宅である証明書」であり、安心と経済的メリットの両面から有効な手段と言えます。
デメリット:評価取得にはコストや調整が必要
住宅性能評価は非常に有用な制度ですが、全ての人にとって無条件でメリットばかりとは限りません。取得にあたっては、いくつかの注意点やデメリットも存在します。
まず最も明確なデメリットは、評価取得にかかる「費用」です。設計住宅性能評価と建設住宅性能評価の両方を取得しようとすると、10万円〜20万円程度のコストが発生するのが一般的です。これは住宅本体の価格に上乗せされるため、資金計画にゆとりのない場合には負担になる可能性があります。
次に、住宅の仕様や設計に対する「制約」が生じる点も見逃せません。例えば、「断熱性能の等級を上げたい」と思えば、断熱材や窓ガラスのグレードアップが必要になり、それに伴って建築費用も増加します。また、ある性能を上げることで別の性能と相反してしまうこともあります。たとえば、開放的な間取りを希望しても、構造安定性の等級を上げるためには壁を多く設ける必要があるなど、理想のデザインと性能評価の両立に苦慮するケースもあります。
さらに、評価のための手続きや検査には時間がかかることもあり、完成・引き渡しまでのスケジュールに影響を及ぼす場合があります。申請から評価書の交付までには数週間を要することが一般的で、引っ越し時期が限られている人にとってはネックとなることもあるでしょう。
このように、住宅性能評価は確かに大きなメリットを持つ一方で、コスト、設計上の調整、スケジュールへの影響といった面でデメリットも存在します。評価の取得を検討する際は、自分のライフプランや予算、住宅に求める優先順位を踏まえて、総合的に判断することが大切です。
新築住宅の住宅性能評価では10分野が対象です
新築住宅は10の性能項目が評価対象
新築住宅における住宅性能評価では、10項目の性能について第三者機関が詳細に評価を行います。この評価は、購入者にとって「安全性」「快適性」「維持のしやすさ」といった、暮らしに直結する重要な判断材料となります。
具体的な評価項目は以下の通りです。
- 構造の安定(耐震性能)
- 火災時の安全
- 劣化の軽減(長寿命化)
- 維持管理への配慮(メンテナンス性)
- 温熱環境(断熱性能、エネルギー効率)
- 空気環境(ホルムアルデヒドなどの濃度)
- 光・視環境(採光や眩しさの抑制)
- 音環境(遮音性)
- 高齢者等への配慮(バリアフリー性能)
- 防犯(玄関や窓の防犯性能)
これらの項目は、それぞれの専門分野に基づいて等級が付けられ、たとえば「耐震等級3」や「温熱環境等級5」といった具合に、性能が数値化されます。これにより、購入者は比較的容易に住宅の「質」を把握することができ、複数の物件を冷静かつ客観的に比較検討する際に非常に役立ちます。
加えて、評価項目の多くは長期的な住まいの維持や価値保持にも関わる内容です。たとえば断熱性の高い住宅は冷暖房費を削減でき、長期的に見て大きなコストメリットがあります。また、劣化を抑える工法や仕様を採用している家は、10年、20年先の修繕コストを大幅に軽減できます。
このように、住宅性能評価の10分野は、住宅購入者が「見えない住宅の質」を数値と基準で確認できる強力なツールであり、これから家を建てる、あるいは購入する人にとって非常に意義のある情報と言えるのです。
設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書の違い
住宅性能評価には2種類の評価書が存在します。「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」です。この2つは取得のタイミングと評価対象に違いがあり、両方を取得することでより高い信頼性を確保できます。
まず「設計住宅性能評価書」とは、建築設計図の段階で評価を受け、設計内容が国の定める基準に適合しているかを確認するものです。これはあくまで「図面通りに建てれば、基準を満たす住宅になる」という段階での評価です。つまり、まだ建物が完成していない段階での性能の保証です。
一方、「建設住宅性能評価書」は、実際の建設現場において設計通りに施工されているかを、評価機関の専門スタッフが検査し、その上で性能を保証するものです。こちらは「実物としての住宅が基準を満たしているか」という観点で、非常に重要な役割を果たします。
両方を取得することで、設計段階の意図がきちんと現場に反映されているかが確認でき、住宅の品質に対する信頼性が格段に高まります。逆に設計評価だけで建設評価を受けない場合、実際の施工で手抜きや設計とのズレが発生しても、それを発見できないリスクが残ります。
また、設計・建設の両方を評価されている住宅は、不動産市場でも高評価を受けやすく、将来的な資産価値の維持にもつながります。住宅の性能だけでなく、「信頼できる記録としての裏付け」が残ることが、住宅性能評価制度の最大の強みでもあるのです。
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中古住宅の住宅性能評価は現況に応じた評価となります
中古住宅は9分野+オプション項目が評価対象
中古住宅における住宅性能評価は、新築住宅と比べて若干異なるアプローチがとられます。その最大の特徴は、「現況評価」であるという点です。つまり、建築時の設計図や仕様書ではなく、実際に現在どのような状態であるかを確認した上で評価が行われます。
評価される項目は、原則として9分野で、新築時に評価される「空気環境」が対象外になります。これは、中古住宅では内装材の変更や経年劣化により、空気中の化学物質の濃度が変化しており、客観的な評価が難しいためです。その他の9項目――構造の安定、火災時の安全、劣化の軽減、維持管理への配慮、温熱環境、光・視環境、音環境、高齢者等への配慮、防犯――については、現地調査によって評価が行われます。
さらに、必要に応じてオプションで追加評価も可能です。たとえば耐震診断、断熱性能診断、配管の状態確認など、買主が重視する項目に応じて柔軟に対応できるのが特徴です。
この現況評価により、購入前に住宅のリスクや性能を正確に把握することが可能となります。特に築年数が経っている住宅や、リフォーム歴のある物件では、評価の有無が購入者の信頼を大きく左右するため、売主・買主双方にとって有益な情報となるのです。
売却を見据えた住宅性能評価の活用方法
住宅性能評価は購入時に役立つだけでなく、中古住宅の「売却時」にも非常に有効な手段となります。特に住宅市場においては、築年数だけでは測れない「中身の良さ」を客観的に示せる材料が少なく、性能評価書の存在が売却成功の鍵を握ることもあります。
売却を予定している場合、事前に住宅性能評価を取得しておくことで、購入希望者に対して「信頼性のある情報提供」が可能になります。例えば「耐震等級2」や「維持管理配慮等級3」といった情報があれば、見た目ではわからない住宅の品質をしっかり伝えることができ、安心感を与えることができます。
また、評価書があることで、購入後のトラブルリスクを低減できる点もメリットです。評価書には検査機関による現地調査結果や劣化箇所の指摘なども含まれるため、「契約前に把握すべき情報」が明示された状態での取引が可能になります。これはクレームの防止や説明責任の明確化にもつながり、売主にとってもトラブル回避の一手となるのです。
さらに、住宅性能評価を取得した物件は、他の類似物件と差別化しやすくなります。買主が安心して購入できる住宅には、価格の面でも一定のプレミアムがつくケースがあり、結果的に早期売却や高値売却につながることも少なくありません。
このように、住宅性能評価は中古住宅の「付加価値」として非常に強力なツールであり、売却戦略の中核として活用することが望ましいのです。
住宅性能評価の申請から取得までの流れを把握しよう
相談から現場検査、評価書の交付までのステップ
住宅性能評価を取得するには、明確な手順に従って進める必要があります。手続きを理解し、事前に段取りを整えておくことで、スムーズに評価書を入手し、スケジュール通りに住宅購入や建築を進めることが可能になります。
最初のステップは、住宅性能評価を実施している「登録住宅性能評価機関」に相談することです。これらの機関は、国に登録されており、各地域に存在しています。まずは電話やウェブサイトから問い合わせを行い、自分の住宅の条件に合った評価の可否、必要な書類、費用などを確認します。
次に行うのが「申請書類の準備と提出」です。新築の場合は設計図面や仕様書、中古住宅では現況を示す図面や写真、点検記録などが必要になります。これらを揃えたうえで、評価機関に正式な申請を行います。
申請後は、設計住宅性能評価であれば「設計図面に基づく書類審査」、建設住宅性能評価では「建築現場での検査」が行われます。現場検査は複数回に分けて実施されることがあり、主に基礎工事完了時、中間検査(上棟時など)、完成時にチェックされます。検査官は、施工が図面通りか、法令や評価基準に適合しているかを細かく確認し、不備がある場合には是正を求めることもあります。
全ての審査・検査をクリアすると、「住宅性能評価書」が交付されます。設計段階では「設計住宅性能評価書」、建設完了後には「建設住宅性能評価書」として発行され、いずれも正式な公的証明書として機能します。これにより、購入者や住宅所有者は、自身の住宅がどの性能項目でどの等級に該当するかを客観的に知ることができるのです。
全体の流れは、書類の準備や検査スケジュールにもよりますが、設計評価で2〜3週間、建設評価では1〜2ヶ月程度が目安です。スムーズな取得のためには、設計段階から評価取得を見据えて準備することが重要です。特に建売住宅などでスケジュールが決まっている場合は、事前に建築業者と調整し、評価スケジュールも組み込んでおくと安心です。
このように、住宅性能評価書の取得は一連の流れを理解し、計画的に進めることで、より確実かつ効率的に進行できます。住宅の「見える性能」を手に入れるための第一歩として、このプロセスを正しく把握しておくことが大切です。
住宅性能評価書の取得には費用がかかるのか?
評価書の取得費用と交付割合の実情
住宅性能評価書は、第三者機関によって公的に性能を認定してもらう制度ですが、その分、一定のコストがかかります。実際にどの程度の費用が必要なのか、またどれほどの住宅が評価書を取得しているのかを知ることは、取得を検討する上で欠かせない情報です。
まず、費用についてですが、評価には2種類あります。「設計住宅性能評価」と「建設住宅性能評価」です。設計評価のみを取得する場合は、5万〜10万円程度が目安です。一方、建設評価も併せて取得する場合には、合計で10万〜20万円程度になることが一般的です。住宅の規模や構造、地域、評価機関によって差が生じるものの、これが概ねの相場といえます。
この費用は、住宅ローンや火災保険の割引、将来的な資産価値の向上などのメリットを考慮すれば、決して高額な支出ではありません。ただし、自己資金が限られているケースや、建築費用が予定より増えてしまった場合には、取得を見送る判断がなされることもあります。
では、実際にどの程度の住宅がこの評価書を取得しているのでしょうか。国土交通省の資料によると、2023年時点で新築分譲住宅の約40%が何らかの形で住宅性能評価書を取得しています。また、注文住宅でも大手ハウスメーカーを中心に取得率は上昇傾向にあり、年々この制度の活用は広がっています。中古住宅においても、最近は性能評価付きの物件が増えており、今後はより一般的な判断材料になると予想されています。
つまり、住宅性能評価書の取得には一定の費用がかかるものの、その内容と将来的な効果を考慮すれば、住宅購入における合理的な投資と捉えることができます。制度自体も年々認知が進み、住宅選びの「新しい常識」として根づきつつあるのです。
住宅性能評価書に関するよくある質問とその回答
H評価書の取得義務はある?
住宅性能評価書は、「義務」ではなく「任意」で取得する制度です。つまり、住宅を建てたり購入したりする際に、必ず取得しなければならないものではありません。しかし、評価書があることで得られるメリットは非常に大きいため、多くの住宅事業者や購入者が積極的に活用しています。
法律上の義務はないとはいえ、国や地方自治体が推進する各種補助制度の対象になっているケースもあります。たとえば、長期優良住宅の認定を受ける際には住宅性能評価書が求められる場合があるほか、フラット35の技術基準を満たす根拠として活用されることもあります。
また、建築主や売主が住宅性能評価書を取得することで、購入者に対して住宅の品質を証明できるため、信頼性のある取引が可能になります。義務ではないとはいえ、事実上は「住宅選びのスタンダード」となりつつある制度なのです。
評価書はいつもらえる?後からでも取れる?
住宅性能評価書の交付タイミングは、評価の種類によって異なります。「設計住宅性能評価書」は建築確認申請と並行して設計図面を基に評価が行われるため、建築着工前に取得できます。一方、「建設住宅性能評価書」は、実際の建設現場の検査が必要となるため、建物が完成した後、すべての検査が完了してからの交付となります。
気をつけたいのは、これらの評価は原則として「建設前」または「建設中」に申請しなければならない点です。新築住宅の場合、完成後に評価を受けようとしても、設計内容や施工過程を正確に確認できないため、評価が難しくなる場合があります。
ただし、中古住宅の場合は「現況評価」という形で、後からでも性能評価を受けることが可能です。評価項目は9つに限られますが、現地調査を通じて現在の住宅の状態を客観的に評価してもらえるため、資産価値の証明や売却時の信頼材料として大いに役立ちます。
このように、住宅性能評価書の取得タイミングは住宅の状態によって異なりますが、状況に応じて柔軟に対応することができます。新築・中古問わず、早めに評価取得を検討するのが賢明です。
評価書って後からでも取得できるの?
新築住宅に関しては、完成後に評価書を取得することは基本的にできません。なぜなら、設計段階や工事中に行われるべき検査がすでに実施できないからです。特に建設住宅性能評価書は、基礎工事や構造体の施工など重要な部分の工程ごとに検査が行われるため、完成してしまった住宅に対しては「確認ができない」と判断され、評価書の発行対象にはなりません。
一方で、中古住宅や築後の住宅については、現況の状態に基づいて評価を受ける「既存住宅性能評価制度」が存在します。これは、第三者の評価機関が現地調査を行い、現在の構造的安定性や劣化の進行度合い、断熱性やバリアフリー対応などについて評価する仕組みです。
この現況評価によって取得した性能評価書は、購入希望者にとって「安心の証」となり、住宅の売却やリフォーム提案時にも活用されます。また、築年数の経過した住宅であっても、一定の基準を満たすことで性能が評価されるため、建物の再評価と価値向上にもつながるのです。
つまり、「新築住宅の完成後」は評価書の取得が困難ですが、「中古住宅」では後からの取得が可能です。住宅の用途や状態に応じて、適切な評価方法を選ぶことが重要です。
建設住宅性能評価書とBELS評価書との違いは?
住宅に関する評価書にはいくつか種類があり、その中でも混同されがちなのが「建設住宅性能評価書」と「BELS(ベルス)評価書」です。両者はどちらも第三者機関によって発行される性能証明ですが、評価の対象や制度の目的が異なります。
建設住宅性能評価書は、住宅性能表示制度に基づき、耐震性・劣化対策・断熱性・防犯など住宅全体の性能を網羅的に評価するものです。設計と建設のプロセスを通して、住宅のトータルな品質が公的に認証されます。評価項目は最大で10分野にわたり、住宅の「暮らしやすさ」「安全性」「資産価値」を総合的に測るものといえます。
一方、BELS評価書は、建築物の省エネルギー性能に特化した評価制度です。BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)は建築物の一次エネルギー消費量を基に評価を行い、星1〜5つの等級で表示します。これは主に「エネルギー効率」に焦点を当てたもので、断熱性能や設備効率、再生可能エネルギーの活用状況などが評価対象です。
両者の違いを一言でいえば、建設住宅性能評価書は「住宅全体の性能評価」、BELSは「省エネ性能の専用評価」です。住宅の購入者にとっては、どちらも有用な情報源ですが、目的に応じて評価書の種類を選ぶことが大切です。両方を取得している住宅は、まさに高性能住宅の証といえるでしょう。
住宅性能評価を正しく理解して安心できる住まいを選ぼう
住宅性能評価という信頼の指標を理解し、賢い住宅選びに活かそう
住宅を購入するという行為は、金銭的にも精神的にも大きな決断を伴います。その中で、外観や間取りといった“見える部分”だけでなく、“見えない部分”である住宅性能にも注目することが、安全で快適な暮らしへの第一歩となります。住宅性能評価は、まさにその「見えない部分」を見える形にしてくれる制度であり、住まい選びの羅針盤といえる存在です。
住宅性能評価では、耐震性や断熱性、劣化対策、バリアフリー性、防犯性能など、暮らしに直結する10分野にわたる性能が、国の基準に基づいて第三者機関によって評価されます。その評価は等級として数値化され、消費者が複数の住宅を客観的に比較・検討する際の明確な指標となります。とりわけ、地震が多い日本においては、構造の安定性(耐震等級)や劣化の軽減、火災時の安全性などは、命や財産に関わる重大な性能です。
また、住宅性能評価書を取得することで、ローンの優遇や保険料の割引、将来的な売却時の資産価値向上といった経済的なメリットも得られます。中古住宅においても、現況評価により建物の性能を「証明」することができ、購入者にとっての安心材料となるだけでなく、売主にとっては販売力強化につながります。
ただし、評価取得には費用がかかり、性能を高めようとすると設計や施工に調整が必要になることもあります。制度の仕組みや取得までの流れ、メリットとデメリットを正しく理解し、納得した上で活用することが重要です。
最終的に、住宅性能評価とは「安心して暮らせる住まいを選ぶための情報の土台」です。見た目や価格だけでなく、住宅の中身にも目を向けてこそ、本当に満足のいく住まい選びが実現します。これから住宅購入を検討する方は、ぜひ住宅性能評価制度を上手に取り入れ、後悔のない選択をしていただきたいと思います。
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