耐震工事で地震に備えるために知っておくべき方法と補助金の活用ポイント

耐震工事で地震に備えるために知っておくべき方法と補助金の活用ポイント

日本は世界有数の地震大国であり、地震に備えるための住まいの対策は欠かせません。中でも「耐震工事」は、住宅の安全性を根本から見直し、命と財産を守るための重要な施策です。しかし、「どこから始めたらいいのか分からない」「費用が不安」「そもそも自分の家は大丈夫なのか」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。本記事では、耐震工事の基礎知識から、具体的な施工方法、補助金や融資の制度、耐震診断の重要性までを丁寧に解説します。専門的な情報をわかりやすくまとめ、あなたの家に本当に必要な耐震対策を見極める手助けとなる内容です。

目次

耐震工事にはどんな種類がある?基礎知識から理解しよう

耐震工事は、住宅や建物の地震に対する安全性を確保するための最も基本的な対策です。しかし一口に「耐震工事」と言っても、そのアプローチには大きく3つの異なる方法があります。建物の強さそのものを高める「耐震」、揺れを吸収する「制震」、そして揺れを建物に伝えにくくする「免震」の3つです。これらはそれぞれ役割や設置対象、コスト、効果などが異なります。適切な工法を選ぶには、それぞれの特徴と違いを正確に理解することが不可欠です。ここでは、各耐震工法の違いとその効果について具体的に解説します。

耐震:建物そのものの強さを高める工法

耐震工法は、最も基本的かつ広く採用されている耐震対策の一つです。この工法は、建物の構造体そのものを強化することで、地震の揺れに耐える力を持たせることを目的としています。主に壁の増設や筋交いの追加、金物の補強などが用いられ、柱や梁の接合部を強固にすることによって、構造全体の剛性が向上します。

たとえば、築40年以上経過した木造住宅では、旧耐震基準に基づいて建てられていることが多く、現在の耐震性能とは大きな開きがあります。こうした住宅は、地震発生時に倒壊のリスクが非常に高くなりますが、耐震補強を行うことで、建物の揺れに対する耐性が劇的に向上します。

また、耐震工法は、既存の建物に対して比較的施工しやすく、コスト面でも抑えやすいのが特徴です。部分的な補強にも対応しやすいため、限られた予算の中で効果的な耐震性能向上が図れます。ただし、建物の重心や壁の配置バランスなどを考慮しなければ、逆に構造的な偏りを生じさせてしまう可能性もあるため、設計と診断が極めて重要になります。

耐震工法は、最も基本的でありながら、正しく設計・施工することで、家族の命と財産を守るための確実な一歩となります。

制震:揺れを吸収して被害を軽減する仕組み

制震工法は、地震による揺れを「吸収」することで、建物自体の損傷や家具の転倒、内装の破損を軽減することを目的とした工法です。耐震が構造そのものの強さに依存するのに対して、制震はエネルギーをいかに減衰させるかに主眼を置いています。

具体的には、「制震ダンパー」と呼ばれる装置を柱や梁に設置し、建物が揺れた際にそのエネルギーを吸収し、揺れ幅を小さくする仕組みです。制震ダンパーには、金属製のものやオイルダンパー、粘弾性体を使用したものなど、様々な種類があります。これらは新築だけでなく、既存住宅への後付けも可能で、施工性に優れた製品も増えています。

たとえば、マンションの中間層や高層住宅などでは、耐震工法だけでは対応しきれないケースがあります。そうした場合に、制震ダンパーを追加設置することで、揺れの影響を大幅に軽減し、二次災害を防ぐことができます。また、近年では木造住宅向けの制震装置も開発が進んでおり、戸建住宅でも導入例が増加しています。

制震は、地震が繰り返し発生した場合や、長周期地震動といった強くゆっくりとした揺れへの対策として非常に有効です。耐震と併用することで、より高い安全性と安心感を確保することができるでしょう。

免震:建物を地面から絶縁して揺れを伝えにくくする

免震工法は、最も高度な耐震技術として知られています。その仕組みは、建物と地面の間に「免震装置」を挟み込み、地震の揺れを建物に直接伝えないようにするというものです。この構造により、地震のエネルギーを大幅に遮断し、建物の揺れを最小限に抑えることが可能になります。

免震装置には、ゴムと鋼板を交互に積層した積層ゴムや、鉛プラグ入りのアイソレータ、滑り支承などの種類があります。建物の基礎部分にこれらの装置を設置することで、地震時には建物が滑るように動き、地盤の動きを吸収します。これにより、建物内部にいる人はほとんど揺れを感じないという驚異的な性能を発揮します。

そのため、免震構造は主に病院や官公庁、大型の公共施設、高層マンションなど、人命や設備の保護が特に重要な建物に採用されています。近年では、高所得層の戸建住宅においても免震工法の導入例が見られるようになりました。

ただし、免震工法には大きな課題もあります。まず施工費が非常に高額であること。また、地盤条件によっては設置が難しいケースもあります。さらに、設置後も免震装置の定期的な点検とメンテナンスが不可欠であるため、維持管理にコストと手間がかかるという点も否めません。

それでも、建物の損傷をほとんど防げるという点において、免震は究極の耐震対策ともいえる工法です。将来的な資産価値や安全性を重視する場合には、有力な選択肢として検討する価値があります。

耐震工事は部分的に施工できる?予算と効果のバランスを考慮しよう

耐震工事と聞くと、「家全体を大規模に補強しなければならないのではないか」と不安になる方が多いかもしれません。実際に、全面的な耐震改修には時間も費用もかかるため、躊躇してしまうのは当然です。しかし、現実には「部分的な耐震工事」を選択することも可能であり、費用対効果の面から見ても十分に意味があります。

まず重要なのは、建物全体の中で「どこが耐震性に欠けているのか」を正確に知ることです。耐震診断を行うことで、基礎、壁、屋根、接合部などの強度を数値化し、どの部分が地震に対して弱いのかを明確に把握できます。たとえば、1階の壁が極端に少なくバランスを欠いている場合、その部分だけに耐力壁を増設することで、建物全体の耐震性能を大きく向上させることができます。

また、予算の制約がある場合には、優先順位をつけて施工することも有効です。たとえば、まずは金物の設置など費用のかからない補強から始め、次に基礎や屋根の改修といった大掛かりな工事を段階的に行うという方法がとられます。これにより、突然の出費を避けながら、少しずつ耐震性を向上させることが可能となります。

ただし、部分施工には注意も必要です。建物全体のバランスを無視して一部だけを補強すると、そこに力が集中して他の部分がかえって損傷しやすくなるというリスクがあります。特に木造住宅の場合、柔構造の特性から、一部だけ硬くすると他の柔らかい部分に負担が集中し、想定外の損壊を招くこともあるのです。

そのため、部分的な耐震工事を選ぶ際には、必ず耐震診断士や構造設計士などの専門家に相談し、建物全体の力の流れを考慮したうえで施工範囲を決めることが不可欠です。信頼できる専門家のアドバイスを受けながら進めれば、限られた予算の中でも安心・安全な住まいを築くことができます。

結論として、耐震工事は必ずしも全体改修でなければならないわけではなく、診断結果に基づいて重点的な補強を行う「部分施工」でも十分な効果が期待できます。大切なのは、見えないリスクを把握し、バランスよく対策を進めること。その積み重ねが、万が一の大地震に備える最も現実的な方法です。

主な耐震工事の方法を理解して効果的に備える

地震に備えるうえで最も効果的なのは、建物の構造そのものを強化することです。耐震工事は一見難しそうに感じるかもしれませんが、基本的な施工方法を理解すれば、なぜそれが必要なのかが明確になります。ここでは、実際に住宅で広く行われている主な耐震補強方法について、それぞれの特徴と施工の意義を詳しく解説します。

壁の増設:構造強化に直結する補強方法

**壁の増設は、耐震補強の中でも最も基本かつ重要な方法です。**建物にかかる地震の力は、柱や梁だけでなく、壁によっても分散・吸収されます。特に、壁が少ない住宅や開口部の多い間取りでは、バランスが崩れてしまい、地震の揺れによって大きな被害を受ける可能性があります。

壁の増設では、耐力壁と呼ばれる構造用合板や筋交いなどを用いて、特定の方向に対する耐震性を高めます。例えば、リビングに大きな窓を設けている場合、その壁面はほとんど構造的な役割を果たしていません。そのような箇所に新たな壁を増やすことで、建物全体のバランスが整い、耐震性能が大きく向上します。

また、壁の増設は新たに壁を追加するだけでなく、既存の壁を補強する方法もあります。柱間に構造用合板を張り付けることで、壁の強度を何倍にも高めることが可能です。見た目を損なわないよう、内装材の下に施工できる場合も多く、実用性と機能性を兼ね備えた方法といえるでしょう。

ただし、壁の配置には注意が必要です。建物全体のバランスを崩してしまうと、逆に特定の箇所に力が集中してしまうリスクもあるため、耐震診断を通じて設計士や建築士と十分に相談しながら進める必要があります。

基礎の補修:劣化した基礎を補うことで建物全体を支える

**どれだけ上部構造を補強しても、その土台となる「基礎」が劣化していれば、耐震性は大きく損なわれてしまいます。**基礎のひび割れや浮き上がり、鉄筋の露出などは、建物全体の安定性を著しく低下させる原因です。

基礎補修にはいくつかの方法がありますが、まずはクラック(ひび割れ)補修が基本となります。これは、エポキシ樹脂などの特殊な補修材をクラックに注入することで、基礎の強度を回復させる方法です。施工は比較的短期間で完了し、費用も抑えられるため、広く利用されています。

さらに、基礎そのものに強度が不足している場合には、「基礎の増し打ち」が検討されます。これは、既存の基礎の外側に新たな鉄筋コンクリートを打設して一体化させることで、基礎の耐力を大幅に向上させる方法です。建物を持ち上げる必要があるケースもありますが、その効果は非常に高く、老朽化した住宅には特に有効です。

このように、基礎補修は住宅の寿命を延ばすだけでなく、地震時の倒壊を防ぐための根本的な対策として不可欠です。

屋根の軽量化:重心を下げて倒壊リスクを低減

**屋根は建物の最上部に位置し、その重量が地震時の揺れ方に大きな影響を与えます。**特に、従来の日本家屋に多く見られる瓦屋根は非常に重く、地震によって揺れが増幅される原因の一つです。これに対して、屋根の軽量化を行うことは、建物の重心を下げ、地震エネルギーの影響を最小限に抑えるための効果的な対策となります。

軽量化の方法としては、瓦を取り外し、金属製やスレート材などの軽い屋根材に葺き替えるのが一般的です。これにより、屋根の重量を従来の半分以下にすることも可能です。屋根材の種類によっては、遮熱性や耐久性にも優れたものがあり、耐震性向上だけでなく、住宅の性能全体を高めるメリットがあります。

さらに、屋根を軽くすることで、建物の揺れ方自体が変わり、基礎や柱にかかる負担も減少します。その結果、建物全体のバランスが良くなり、構造的な安定性が高まります。耐震補強としてだけでなく、老朽化した屋根のリフォームの一環としても屋根軽量化は検討の価値があります。

金具の設置:接合部を強化して建物の揺れを防ぐ

**建物の強度を左右するのは、柱や梁などの主要な構造材だけではありません。**それらをつなぎ合わせる「接合部」の強さも、建物の耐震性を大きく左右します。地震時に柱が抜けたり、梁がずれたりするのを防ぐには、金具による補強が極めて有効です。

具体的には、「ホールダウン金物」「筋かいプレート」「柱頭柱脚金物」など、各部位に応じた金物を取り付けることで、揺れに対する耐性を高めます。これらの金物は、比較的安価かつ短期間で施工可能であるため、手軽な耐震補強として非常に人気があります。

たとえば、木造住宅の柱脚部分にホールダウン金物を取り付けることで、地震時の引き抜き力に対抗し、柱が基礎から離れるのを防ぐことができます。また、筋かいを補強する金具を取り付けることで、構造材の変形や破断を防止する効果も期待できます。

こうした金物の設置は、見た目には分かりにくい施工ですが、建物の安全性を根本から支える非常に重要な工事です。耐震補強の第一歩として、金物補強から始めるのも賢明な選択です。

耐震工事を検討すべき5つの目安をチェックしよう

耐震工事が必要かどうかを判断するのは、専門家でなければ難しいと思われがちですが、実は誰にでも確認できるポイントがいくつか存在します。建物の築年数、構造、立地条件など、見逃してはいけない「目安」を知っておくことで、地震に対する備えを具体的に進めることができます。ここでは、耐震工事を検討すべきかどうかを判断するための5つの重要な目安について詳しく解説します。

築年数:旧耐震基準に基づいた住宅の見直し

**建物が建てられた時期は、耐震性を判断する上で非常に重要な指標です。**日本の耐震基準は1981年に大きく改正され、それ以前に建てられた住宅は「旧耐震基準」に基づいています。この旧基準では、震度5程度の地震を想定して設計されており、現在のような震度6強〜7の大地震には対応できない構造となっていることが多いです。

そのため、1981年以前に建築された住宅は、原則として耐震診断を受けることが推奨されており、実際に倒壊のリスクが高いとされています。加えて、1995年の阪神・淡路大震災や、2016年の熊本地震などで倒壊した多くの住宅が、この旧耐震基準に該当していたことも確認されています。

築年数が古い住宅に住んでいる方は、「見た目がしっかりしているから大丈夫」と安心せず、専門家による耐震診断を受けることで、必要な補強工事の範囲を明確にすることが重要です。住まいの築年数を確認することは、命と財産を守る第一歩となります。

壁面積:壁のバランスが耐震性に影響を与える

**住宅の耐震性は、単に壁の「枚数」ではなく、「バランス」が大きなカギを握ります。**特に、1階部分に大きな開口部(窓やドア)が集中していたり、壁が偏って配置されていると、地震の力をうまく分散できず、特定の部位に力が集中してしまいます。これが、建物の倒壊や破損につながる原因となります。

例えば、片側にしか壁がない「片壁構造」の住宅では、地震によって一方向に力が集中し、壁が破壊された結果、建物全体が傾いたり倒壊したりする危険があります。このような状況は、見た目には分かりにくく、実際に地震が発生して初めて明らかになることも少なくありません。

耐震診断では、建物の壁量や配置バランスが詳細にチェックされ、不足している部分には耐力壁の増設が推奨されます。壁面積が不足していると診断された場合は、そのままにせず、早めの対策が重要です。

住宅の安全性を高めるためには、「壁があるかどうか」ではなく、「適切な位置に十分な量の壁があるか」を確認することが肝心です。

地盤:地盤の種類によって揺れ方が異なる

**建物が建っている「地盤」の強さも、耐震性に大きな影響を与える要素です。**同じ地震でも、固い地盤と柔らかい地盤では揺れ方が大きく異なります。固い地盤では揺れが小さく収まりますが、柔らかい地盤では揺れが増幅され、建物へのダメージが大きくなる傾向があります。

たとえば、埋立地や川の近くにある土地、谷底低地などでは、地盤が非常に柔らかく、液状化現象が起こりやすい傾向にあります。過去の大地震でも、こうした地盤に建つ住宅が大きな被害を受けるケースが多数報告されています。

地盤の性質は、一見しただけでは分からないため、「地盤調査」が不可欠です。新築時であれば必ず行われるものですが、中古住宅や古い住宅に住んでいる場合は、地盤のデータが不明なことも多いため、改めて調査を依頼する必要があります。

柔らかい地盤と判明した場合には、基礎補強や地盤改良工事など、適切な対策を講じることで、被害を最小限に抑えることが可能です。土地選びの段階から地盤を確認することは、長期的な安全性と資産価値の維持にもつながります。

吹き抜けの有無:構造的な弱点になり得る

**現代の住宅では、開放感やデザイン性を重視して「吹き抜け」を設ける間取りが増えています。**しかし、この吹き抜けは構造上の大きな弱点となる可能性があるため、耐震性を考える上で慎重な検討が必要です。

吹き抜けがあると、上階の床が途切れ、下階の壁や柱の配置が偏ることになります。これは、建物全体の重力や地震のエネルギーを分散する構造が不均一になることを意味し、地震発生時に特定の部分へ力が集中してしまう要因になります。特に2階建ての住宅で1階に広い吹き抜けがある場合、2階部分を支える要素が不足し、倒壊リスクが高くなるのです。

もちろん、吹き抜け自体が悪いというわけではありません。耐震設計がしっかりなされていれば、吹き抜けのある住宅でも十分に安全性を確保できます。重要なのは、吹き抜けに対応するように他の部分で構造バランスを取る設計と補強が行われているかどうかです。

すでに吹き抜けのある住宅に住んでいる場合には、耐震診断によって壁量や接合部の強度を確認し、必要に応じて補強工事を行うことが推奨されます。吹き抜け下に新たに壁や柱を増設する、梁の補強を行うなど、専門家と相談しながら的確な対応を進めましょう。

快適な住空間の裏に潜む構造的リスクを正しく理解し、安全とデザインの両立を図ることが、賢い住まいの維持管理と言えます。

耐震診断の結果:数値で判断する必要性

**耐震工事を行うかどうかを最終的に判断するうえで、最も信頼できる根拠となるのが「耐震診断の結果」です。**耐震診断とは、建物の構造、安全性、老朽度などを調査・評価し、地震時の倒壊リスクを数値化する手続きです。特に1981年以前に建てられた住宅や、中古住宅を購入予定の方には欠かせない検査といえるでしょう。

診断では、建物の図面や現地調査をもとに、耐震性能のスコアが算出されます。一般的には「Is値(構造耐震指標)」という数値で表され、「0.6未満」は倒壊の危険性が高く、「1.0以上」であれば安全性が高いとされています。この数値に基づいて、どの部分に補強が必要なのかが明確になり、無駄のない工事計画を立てることができます。

耐震診断のメリットは、曖昧な不安を「見える化」できる点にあります。「築年数が古いから不安」「壁が少ないように感じる」など、感覚的な不安は誰もが持つものですが、それを科学的に評価し、対策の必要性を客観的に判断できることが、診断の最大の利点です。

また、自治体によっては、耐震診断にかかる費用の一部または全額を補助する制度も用意されています。診断結果に応じた補強工事に対しても、補助金が交付されるケースがあるため、経済的な負担を抑えて対策を進めることが可能です。

命を守る家づくりの第一歩は、現状を正しく知ることから。耐震診断は、そのための最も確実で信頼できる手段です。早めの診断で、大切な家族と財産を守りましょう。

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耐震工事で利用できる補助金制度

耐震工事は住宅の安全性を確保する上で非常に重要ですが、同時に費用がかかる工事でもあります。そのため、多くの人が「お金の問題で実施をためらっている」というのが実情です。そこで活用したいのが、国や自治体が提供している各種の補助金制度です。これらを上手く使うことで、自己負担を大きく減らしながら、安心できる住まいづくりを実現することが可能になります。

国や自治体の補助金:地域によって制度が異なる

**耐震補強にかかる費用の一部を国や地方自治体が助成してくれる制度は、住宅所有者にとって大きな味方です。**この補助金は全国一律ではなく、自治体ごとに支給対象・金額・条件が大きく異なる点に注意が必要です。

多くの自治体では、「1981年以前に建築された木造住宅」を対象としており、まずは耐震診断を受け、その結果に基づいて補強工事を行うという流れになります。補助対象となる工事内容は、耐力壁の増設や基礎補強、屋根の軽量化など、構造的に耐震性能を向上させるものに限られます。

補助金額は自治体によって異なりますが、耐震診断に対して5万〜10万円、耐震補強工事に対しては最大100万円程度が支給される例もあります。また、東京都や大阪市などでは、より高額な助成制度を実施していることもあるため、地域ごとの制度を調べることが第一歩となります。

手続きの方法も自治体ごとに違いがありますが、一般的には「事前申請→診断→補強計画→着工許可→工事→完了報告→助成金受け取り」という流れです。補助金の申請には一定の期間がかかるため、早めの行動が求められます。

補助金制度を活用することで、高額な耐震工事も現実的な選択肢となります。まずは自治体の公式サイトや、住宅相談窓口などで情報収集を始めましょう。

住宅金融支援機構の融資・税制優遇:金利優遇や減税措置

**耐震工事にかかる費用は補助金だけでまかないきれないケースもあります。**そうしたときに頼れるのが、住宅金融支援機構や国の税制優遇制度です。これらは「ローン」「減税」という形で、間接的に家計を助けてくれる制度です。

まず、住宅金融支援機構では、「耐震改修促進計画」に基づいた住宅ローンの金利優遇を行っています。たとえば、耐震改修を含むリフォームローンを利用する場合、一定条件を満たすことで金利が通常よりも低く設定される仕組みです。これにより、総返済額を抑えることができ、資金調達のハードルを下げることができます。

また、所得税や固定資産税などの税制優遇も見逃せません。耐震改修を行った住宅については、「耐震改修促進税制」により、所得税の控除や、固定資産税の減額が一定期間認められることがあります。これは工事内容や建築時期、工事費用などの条件を満たす必要がありますが、うまく活用すれば数十万円規模の節税効果が期待できます。

これらの制度は、補助金と併用できるケースもあるため、トータルでの費用負担を大幅に削減することが可能です。事前に金融機関や税務署、住宅支援機構の窓口などで相談し、自分の状況にあった制度をフル活用しましょう。

費用がネックで耐震工事を諦めるのではなく、こうした支援制度を上手に取り入れることで、安全と安心を手に入れる道は必ず開けます。

【1】壁を強くする・増やす耐震工事で安全性を高めよう

耐震補強において、壁の強化は最も基本かつ効果的な対策です。地震のエネルギーは建物全体に伝わりますが、その力を受け止める役割を担うのが「壁」です。壁の量が少なかったり配置が偏っていたりすると、建物の構造はバランスを失い、揺れに対する耐性が著しく低下します。

多くの住宅では、リビングやダイニングの快適性を重視するあまり、壁を取り払って大空間にしているケースがあります。もちろん住みやすさや開放感は大切ですが、それが耐震性における「弱点」になってしまうこともあります。実際、阪神・淡路大震災や熊本地震などでは、壁量の不足が倒壊の大きな要因の一つとされました。

耐震補強としての「壁の増設」は、こうした構造的な脆弱性を補う手段です。柱と柱の間に構造用合板を設ける、筋交いを追加する、モルタル壁や鉄骨フレームで補強するなど、さまざまな方法があります。どの工法も建物の揺れに対する強度を高める効果がありますが、バランス良く配置することがとても重要です。たとえば、東西方向にだけ壁が集中し南北には全くないようなケースでは、どれだけ壁が多くても耐震性能は十分とは言えません。

また、壁の強化には「既存の壁を補強する」方法と、「新たに壁を増やす」方法があります。前者は費用も工期も比較的短く済むため、予算が限られている家庭でも導入しやすいでしょう。後者はより大きな補強効果が期待できますが、内装の変更が伴う場合があるため、生活動線への影響も検討する必要があります。

地震はいつ起こるか分かりません。しかし、壁を適切に配置・補強することで、倒壊のリスクを確実に下げることができます。まずは耐震診断を行い、自宅における壁の量と配置が適切かをチェックするところから始めましょう。見た目では判断しづらい構造的な弱点こそ、専門家の視点で補強すべき重要ポイントです。

【2】基礎を強くする耐震工事で土台から建物を守る

建物の構造をどれだけ補強しても、その土台である「基礎」が弱ければ、地震の衝撃に耐えきれません。耐震工事において基礎の補強は、構造的な耐震強化の根幹を成す重要な作業です。基礎がしっかりしていることで、建物全体の揺れ方が安定し、倒壊や大きな損傷のリスクを著しく低減できます。

築年数の経った住宅では、無筋コンクリートや布基礎といった旧基準の工法が採用されていることが多く、これらは現在の耐震基準を満たしていない可能性が高いです。また、基礎のひび割れや鉄筋の腐食などが進行していると、見た目はしっかりしていても、地震の衝撃で一気に構造が崩れるリスクがあります。したがって、耐震改修においては「基礎の現況調査」が非常に重要であり、補修の必要性を見極める出発点となります。

補強方法としては、「既存基礎の補修」「増し打ちによる補強」「新設基礎の追加」の3つが主に用いられます。ひび割れに対してはエポキシ樹脂の注入が効果的で、クラックの進行を止めるだけでなく、構造的な接着力を回復させることが可能です。強度不足の場合には、既存基礎の外側に鉄筋を組んでコンクリートを打設し、全体を一体化させる「増し打ち」が行われます。これにより、耐力が飛躍的に高まり、地震の衝撃に耐える基盤を形成できます。

さらに、地盤が弱かったり基礎の構造が極めて劣化している場合は、「ベタ基礎の新設」といった根本的な再構築も選択肢となります。この場合、建物を一度持ち上げて工事を行うため、コストと期間はかかりますが、その分得られる安心感は計り知れません。

基礎工事は普段目に見えない部分のため、後回しにされがちですが、実際には建物全体の安全性を左右する要所です。自宅の基礎に不安がある場合や築古住宅にお住まいの方は、まず専門家に調査を依頼し、必要な補強を段階的に行っていくことが重要です。

【3】木材が腐ったり、シロアリで傷んだ箇所(劣化)を直す

住宅の耐震性能を維持・向上させるうえで、見落とされがちなのが「劣化した部分」の補修です。中でも、木造住宅において最も深刻な問題となるのが、木材の腐食やシロアリ被害です。これらの劣化は、見た目では気づきにくいことも多く、気づいたときには構造材の強度が著しく低下しているというケースも少なくありません。

木材の腐食は、主に水分や湿気が原因で発生します。雨漏りや結露、風通しの悪さによって木材に水分が滞留し続けると、時間とともに腐朽菌が繁殖し、木材を内部から破壊していきます。こうした腐食は、床下や屋根裏など、普段目にしない場所で進行していることが多く、放置すれば柱や梁といった主要構造部材が著しく弱体化します。

また、シロアリ被害も耐震性を大きく損なう原因です。シロアリは地中から建物に侵入し、主に床下の土台や柱の根元部分を食害します。特に被害が進行していると、地震の揺れに対して構造体が持ちこたえることができず、倒壊に直結する危険性があります。

こうした劣化部分の補修では、まず被害状況の正確な診断が必要です。専門業者による調査により、腐朽・食害の範囲や進行度を明確にし、必要な補修計画を立てます。腐った木材は撤去・交換が基本となり、補強用の金物や構造材の追加などで強度を回復させます。また、シロアリ被害の場合には、駆除に加えて予防処理を行い、再発防止の対策も講じます。

木材の劣化対策は、単なるメンテナンスにとどまらず、家全体の耐震性を根本から支えるための不可欠な作業です。築年数が経過した住宅、湿気が多い環境、過去に雨漏りがあった住宅などでは、ぜひ一度、構造材の健康状態をチェックしてみてください。見えないリスクへの早期対応こそが、安心できる住まいを長く維持するためのカギとなります。

【4】屋根を軽くする耐震工事で重心を下げる効果とは

耐震性を高めるために注目すべきポイントのひとつが「屋根の軽量化」です。地震による被害を最小限に抑えるには、建物全体の重心を下げることが非常に重要です。その中でも、最上部に位置する屋根の重量が耐震性に与える影響は大きく、軽量化によって建物全体の揺れ方を変えることができます。

日本の伝統的な住宅には、美観や断熱性を重視した瓦屋根が多く使われてきました。しかし、瓦は非常に重く、1平方メートルあたり約60kgに達することもあります。これは、屋根全体で数トンに及ぶ重さになり、地震が発生した際には、その重さが建物の上部に加わることで揺れが増幅され、倒壊リスクが高まる要因となるのです。

そのため、近年の耐震リフォームでは、屋根を金属板やスレートなどの軽量素材に葺き替える「軽量化工事」が効果的な対策として注目されています。軽量屋根は、瓦屋根に比べて重さが約3分の1程度になるため、建物の重心が下がり、地震による揺れの影響が格段に減少します。

さらに、軽量屋根には施工が比較的容易で、工期が短いというメリットもあります。断熱材と一体化した製品も登場しており、夏場の暑さ対策や冬の結露防止にもつながるなど、耐震性だけでなく快適性も向上させる効果が期待できます。

もちろん、屋根材の変更にあたっては、既存の屋根構造や勾配、地域の気候条件などを総合的に考慮する必要があります。例えば、積雪地域では、あえて屋根にある程度の重量を持たせることで雪の滑落を抑制する設計が必要になることもあるため、地域に適した判断が求められます。

屋根の軽量化は、見た目の印象にはそれほど変化がない一方で、構造全体に大きな安全性をもたらす効果的な工事です。特に、築年数の古い木造住宅に住んでいる場合は、耐震診断とあわせて屋根の重さについてもチェックし、必要に応じて軽量化を検討することが、安心・安全な住環境をつくる鍵となります。

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