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地震に備える木造住宅の耐震性能を徹底解説します

地震に備える木造住宅の耐震性能を徹底解説します

日本は世界でも有数の地震多発国として知られています。そのため、住宅に求められる耐震性能は極めて重要なテーマとなっています。中でも多くの方に選ばれている木造住宅について、「本当に地震に強いのか?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。この記事では、建築基準法に基づく耐震性能の概要から、工法による違い、過去の地震被害から学ぶ教訓、そして耐震補強や最新技術の活用方法まで、木造住宅の耐震性に関する情報を徹底解説します。これから家を建てる方や、現在の住まいの耐震性に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

建築基準法では木造住宅にどの程度の耐震性が求められているのか

日本に住んでいる限り、地震のリスクは避けて通れません。特に木造住宅に住もうと考えている人にとって、「この家は大地震に耐えられるのか?」という不安は非常に現実的なものです。多くの方が「建築基準法を満たしていれば安心」と思いがちですが、それは本当に正しい認識なのでしょうか。実際に、法的に求められている耐震性能の中身を知ると、そのギャップに気づかされることも少なくありません。

建築基準法では、1981年に大きな転換点を迎えました。それ以前に制定されていた「旧耐震基準」では、「震度5程度の中規模地震で倒壊しないこと」が目安とされていました。しかし、1978年の宮城県沖地震で多くの住宅が被害を受けたことをきっかけに、国は耐震基準を見直します。そして生まれたのが「新耐震基準」です。新耐震基準では、「震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊・崩壊しない」ことが求められています。つまり、最低限、建物の中にいる人の命を守る構造であることが基準とされています。

ここで注意が必要なのは、「倒壊しない=無傷で済む」わけではないということです。実際には、激しい揺れにより壁がひび割れたり、屋根がずれたりといった損傷が発生する可能性があるのです。また、新耐震基準は「1度の大地震に耐えること」を前提としているため、繰り返しの揺れや余震に対しては十分ではありません。つまり、法的な基準を満たしていても、必ずしも安全とは言えないのが現実なのです。

さらに言えば、建築基準法はあくまで「最低限」の基準です。これは、全ての住宅が耐震等級1(建築基準法と同等)で建てられることを意味します。一方で、より高い耐震性能を求める場合は、耐震等級2や等級3といった、さらに上位の設計を選択する必要があります。たとえば、等級3は耐震等級1の1.5倍の強さがあり、消防署や警察署などの災害拠点施設と同等の耐震性を誇ります。

つまり、建築基準法を満たしているからといって、それだけで安心するのは危険です。むしろ、それを出発点として、より安全な暮らしを実現するために、自分の住宅の耐震性能を主体的に理解し、必要な対策を講じることが求められています。これは新築住宅の購入や建築に限らず、既存住宅の購入やリフォームを検討する際にも当てはまります。

「最低限の基準=安全ではない」という認識を持つことで、はじめて本当の意味での安心・安全な住まいづくりがスタートします。地震に強い木造住宅を目指すなら、まずは建築基準法が定める「ライン」を正確に理解することが不可欠です。

木造住宅の構造や工法の違いで変わる耐震性とは

木造住宅と聞くと、多くの方は「地震に弱いのではないか」という不安を抱きがちです。ですが実際には、木造住宅の耐震性は、その構造や工法によって大きく異なります。つまり、「木造=地震に弱い」という単純な図式は、必ずしも当てはまらないのです。構造的な理解を深めることで、より安心して住まい選びができるようになります。

現在、日本で主に採用されている木造住宅の工法は、大きく分けて3つあります。「木造軸組工法(在来工法)」「木造枠組壁工法(2×4工法)」「木造ラーメン構法」です。それぞれに長所と短所があり、耐震性の観点から見ると選択のポイントが変わってきます。

木造軸組工法は、日本で最も広く普及している伝統的な工法です。柱と梁を組み合わせて構造を作るため、設計の自由度が高く、間取りを柔軟に変更できるのが特徴です。しかし、地震に強い家を実現するためには、壁のバランスや接合部の強化が不可欠です。特に「耐力壁」と呼ばれる、揺れに対抗する壁の配置が不十分だと、構造的な弱点となってしまいます。また、リフォームなどで無計画に壁を抜いたり開口部を広げたりすると、耐震性能が大きく損なわれる可能性があります。

一方で、木造枠組壁工法(2×4工法)は、構造用合板で囲んだパネル構造を組み合わせて箱型の住宅を作るため、地震の力を面全体で受け止めることができます。そのため、地震エネルギーが分散しやすく、耐震性に優れていると評価されています。施工の規格化も進んでいるため、品質が安定しやすいのも大きな利点です。ただし、設計の自由度が軸組工法に比べてやや劣るため、間取りや開口部に制限が生じる場合もあります。

さらに近年注目されているのが、木造ラーメン構法です。これは鉄骨造などで用いられてきた「ラーメン構造(柱と梁でフレームを構成する構法)」を木造住宅に応用したものです。柱と梁の接合部を剛接合とすることで、高い耐震性と大空間の設計自由度を両立できます。この構法では壁が耐震要素ではなくなるため、開口部の制限が少なく、広々とした空間を確保しながらも耐震性能を保つことができます。ただし、コストが高くなる傾向があり、施工できる会社も限られているため、選択肢としてはややハードルが高めです。

これらの工法の違いを理解せずに住宅を選んでしまうと、自分の希望する間取りや暮らし方に適していない構造を選んでしまうリスクもあります。特に、地震が多発する地域では、「どの構法が一番地震に強いのか」だけでなく、「自分たちのライフスタイルにとって最も安全で快適な構法はどれか」を考える必要があります。

地震の脅威は避けられませんが、構造や工法を正しく選ぶことで、そのリスクを最小限に抑えることができます。安心できる木造住宅を実現するためには、表面的なイメージではなく、工法ごとの特徴と構造的な強み・弱みを深く理解することが何よりも大切です。住宅選びの際には、工務店や建築士としっかり話し合い、自分に合った構法を選ぶようにしましょう。

能登半島地震の被害から見る木造住宅の現在の耐震基準の有効性

2024年に発生した能登半島地震は、震度7という極めて強い揺れを観測し、多くの建物に甚大な被害をもたらしました。この地震を通して、私たちは「耐震基準がどこまで機能していたのか」という点に改めて向き合う必要があります。特に木造住宅においては、築年数や構造によって被害の差が大きく、建築基準法の有効性が問われる出来事となりました。

被災地での調査結果によると、新耐震基準(1981年以降の基準)に則って建てられた木造住宅は、倒壊や全壊を免れた例が多数報告されています。これは、「震度6強〜7の揺れでも倒壊しない」という基準が一定の成果を上げていることを示しています。特に、耐震等級2以上の住宅や、設計段階で構造計算が徹底されていた建物では、目立った構造的損傷が少なかったという事例も確認されています。

しかし一方で、倒壊を免れた住宅であっても、内部の損傷や外壁の剥落、屋根材の落下など、居住継続が困難となるほどの被害を受けた建物も多く存在しました。つまり、「命は守れたが住まいとしては機能しない」というケースが多数見られたのです。これにより、建築基準法が掲げる「倒壊を防ぐ」という最低限の目標は達成されていたとしても、本当の意味での安心・安全な暮らしが守られていたかどうかは別の問題であることが浮き彫りになりました。

さらに、旧耐震基準で建てられた木造住宅、つまり1981年以前に建築された住宅は、被害が極めて深刻でした。全壊・半壊の割合が非常に高く、人命にも直接関わる深刻な状況が報告されています。このことは、旧基準が現在の地震リスクに対応できていないことを明確に示しており、今後の大地震に備える上で、耐震補強や建て替えの重要性を改めて認識させられます。

このように、能登半島地震の実例は、建築基準法が一定の効果を発揮している一方で、「最低限の基準では不十分である」ことを教えてくれます。耐震基準を満たしているからといって過信するのではなく、耐震等級の向上や構造的な補強、非構造部材(外壁、天井、家具など)の安全対策まで踏み込んだ備えが必要です。特に、地震後もその住宅に住み続けることを前提とするなら、単なる「倒壊しない家」ではなく、「継続して暮らせる家」を目指すべきです。

今後予測される南海トラフ地震や首都直下地震など、さらに大きな地震が発生する可能性を考えれば、今回の教訓を生かし、木造住宅の耐震性能を一層高めていく取り組みが急務と言えるでしょう。耐震基準はあくまで出発点にすぎず、そこからどれだけ積極的に安全性を高めるかが、住まいの価値を決定づける鍵になるのです。

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木造住宅の耐震性を高めるためにできること

地震に強い木造住宅を実現するには、設計段階での工夫だけでなく、既存住宅に対しても適切な対策を講じることが重要です。「木造住宅=地震に弱い」という印象は根強いものの、正しい方法で補強や改修を行えば、十分に高い耐震性能を確保できます。家族の命と暮らしを守るために、私たちにできることは想像以上に多くあります。

まず第一に考えたいのは、「耐震診断」です。これは、既存住宅の構造や基礎の状態、壁の配置などを専門家が調査し、耐震性の評価を行うものです。築年数が古い住宅や、1981年以前に建てられた旧耐震基準の住宅では、この診断がとても重要です。診断を通して、どこが弱点なのか、どの部分を強化すればよいのかが明確になります。中には、外見上は問題なさそうに見えても、構造的には危険なケースもあるため、見た目だけでは判断できないのが実情です。

耐震診断の結果を踏まえたうえで行うのが「耐震補強工事」です。具体的には、筋交いや構造用合板を追加して壁を強化したり、基礎を鉄筋コンクリートで補強したりといった工事が挙げられます。特に、耐力壁の設置や、接合部に使用する金物の交換・追加は、比較的簡易な工事でありながら、耐震性能に大きな影響を与える部分です。また、屋根が重い瓦の場合、軽量化することで建物全体にかかる負荷を減らすといった工夫も有効です。

さらに、木造住宅では経年によって柱や梁の劣化、シロアリ被害、基礎のひび割れなどが発生することがあります。これらも耐震性能を著しく低下させる原因になるため、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。家は「建てたら終わり」ではなく、「住み続ける中で守るもの」であるという意識を持つことが大切です。

新築を検討している場合は、設計の段階で耐震等級2または3を目指すことを強くおすすめします。特に等級3は、建築基準法の1.5倍の耐震力があり、消防署などの重要施設と同じレベルです。これに加えて、制震装置や免震構造の導入を組み合わせることで、地震エネルギーをより効率的に吸収し、建物へのダメージを軽減することができます。

耐震補強には一定のコストがかかりますが、多くの自治体では補助金制度が用意されています。これらを活用すれば、費用負担を大きく軽減しながら、安全性を高めることが可能です。制度の内容は地域によって異なるため、自治体のホームページや建築士に相談して確認することが大切です。

地震は予測が難しい自然災害ですが、それに備える方法は明確に存在します。木造住宅の耐震性を高めるためには、現状を正しく把握し、必要な対策を一つずつ講じていくことが何よりも大切です。命を守るための備えは、早ければ早いほど効果的です。住宅は「住むための箱」ではなく、「家族を守るシェルター」だと考え、今できる最善の行動をとりましょう。

免震・制震・耐震の違いを理解しよう

地震大国・日本で暮らすうえで、住宅の耐震性能は家族の命を守る最も重要な要素です。しかし、「耐震」という言葉はよく耳にしても、「免震」や「制震」との違いを明確に理解している人は意外と少ないのが現実です。住宅の構造を選ぶ際に、この3つの考え方を正しく理解することは、将来の安全性や暮らしやすさを左右する大きなポイントとなります。

まず、「耐震」とは、建物の構造自体を強化して、揺れに「耐える」考え方です。柱や梁、壁などの構造材を頑丈に設計することで、地震の力に直接対抗します。日本のほとんどの住宅に採用されている基本的な考え方で、コスト面でも導入しやすいというメリットがあります。ただし、建物自体が地震エネルギーを受け止めるため、揺れのエネルギーを逃がすことはできず、被害を最小限にとどめるためには設計精度と施工技術が非常に重要です。

一方、「制震」は、揺れを吸収する技術です。建物内部にダンパー(制震装置)と呼ばれる部材を設置し、地震のエネルギーを熱や摩擦などに変換して、揺れの衝撃を軽減します。これにより、建物の変形や損傷を抑えることができ、繰り返し発生する余震にも強い構造を実現できます。特に、耐震性に不安がある既存住宅に制震装置を後付けするリフォームも近年増えており、柔軟な対策として注目されています。

そして、「免震」は最も高度な地震対策技術であり、建物と地盤の間に特殊な装置(免震装置)を設置することで、地震の揺れを直接建物に伝えないようにする仕組みです。地盤が揺れても、建物自体はゆっくりと動くため、家具の転倒や内部の損傷を大幅に軽減できます。その快適さと安全性の高さから、高層マンションや病院、行政施設などに多く採用されています。ただし、設置には大規模な工事が必要であり、コストも高くなるため、一般住宅では導入が難しい場合もあります。

この3つの地震対策は、それぞれの特徴とメリット・デメリットを持っています。耐震は基本的な守り、制震はダメージの軽減、免震は揺れそのものを避ける技術です。どれか一つを選ぶというよりも、建物の条件や予算、立地環境に応じて最適な組み合わせを考えることが重要です。たとえば、耐震構造をベースに、制震ダンパーを加えることでより実用的な防災性能を実現できるケースもあります。

地震対策は、建物の強さだけでなく、住まい手の暮らしの安心にも大きく影響します。どの方式が「正解」かは一概には言えませんが、正しい知識を持ち、自分たちの生活スタイルに合った構造を選ぶことこそが、真に安全な住まいづくりにつながります。耐震・制震・免震という三つの選択肢を比較検討しながら、自宅にふさわしい対策を見極めましょう。

最新の耐震等級制度と耐震等級3の重要性

地震から命を守る家を建てたいと考えたとき、どのくらいの耐震性能を持つべきか、その判断基準がわからず迷う人も多いのではないでしょうか。耐震性能を数値化して比較する方法として、現在広く活用されているのが「耐震等級制度」です。これは住宅の耐震性を客観的に評価できる基準であり、新築住宅はもちろん、リフォームを考える上でも欠かせない指標となっています。

耐震等級は1〜3までの3段階に分けられています。耐震等級1は、建築基準法で定められている最低限の耐震性能を満たすレベルです。つまり、震度6強〜7程度の地震で倒壊しない程度の強さを備えていることになります。等級2はその1.25倍の強さ、等級3は1.5倍の強さを持ち、災害時の防災拠点となる建物(消防署や警察署など)と同等の耐震性能を有しているとされています。

なかでも耐震等級3の価値は非常に高く、単に命を守るだけでなく、地震後も建物としての機能を維持しやすいという利点があります。実際に、大きな地震の際には等級3の建物が無被害もしくは軽微な損傷で済んだ例が多数報告されており、その耐久性の高さが実証されています。また、耐震等級3を取得している住宅は、住宅ローン減税や地震保険料の割引、自治体の補助金対象となる場合もあり、経済的メリットも見逃せません。

一方で、耐震等級3の取得には設計段階からのしっかりとした計画と構造計算が求められます。壁の配置バランスや構造材の選定、接合部の設計など、細部にまで耐震を意識した設計が必要となり、一般的な設計よりもコストがかかる場合もあります。しかし、それでも多くの専門家が「命と財産を守るうえで最も費用対効果の高い投資」として耐震等級3の取得を推奨しています。

耐震等級制度は、「目に見えない安心」を可視化する仕組みです。デザインや間取りだけでは判断できない構造上の安全性を、等級という形で比較・検討できるのは、家づくりにおいて非常に大きな意味を持ちます。これから新築を計画している人はもちろん、建売住宅を購入しようとしている人も、等級が表示されているかどうかを必ず確認し、可能であれば等級3の物件を選ぶことをおすすめします。

家は一度建てれば何十年も暮らし続ける場所です。だからこそ、「もしも」の時に備えた堅牢な構造が不可欠です。耐震等級3の家は、家族の安全だけでなく、災害後も暮らしを続けるための確かな基盤となります。安心して暮らせる住まいづくりの第一歩として、耐震等級制度を正しく理解し、積極的に活用していきましょう。

木造住宅の耐震性能を高める設計・建材の工夫

地震に強い木造住宅をつくるためには、構造や工法の選択だけでなく、設計の工夫や使用する建材の選定も極めて重要です。地震の多い日本では、建築基準法を満たすことは最低限の条件にすぎません。真に安心して暮らせる家を建てるためには、日々の設計・施工の段階から、より高い耐震性を意識した家づくりを行うことが求められます。

まず、設計段階で注目したいのは「建物の形状とバランス」です。耐震性の高い住宅に共通する特徴として、建物の形がシンプルで左右対称、かつ重心が偏っていないことが挙げられます。例えば、L字型やコの字型といった複雑な形状は、地震エネルギーを一部の構造に集中させてしまい、特定の箇所が破損・倒壊するリスクを高めます。極力、凹凸の少ない矩形に近い構造を意識することで、全体で揺れを受け止め、被害を分散させることが可能になります。

さらに、「耐力壁の配置」も非常に大切です。耐力壁とは、建物に加わる水平力(地震や風)に対抗するための壁のことです。この壁が適切な位置にバランスよく配置されていないと、建物がねじれたり、一部が先に壊れたりする可能性があります。特に注意したいのが、1階に駐車スペースや店舗などの大開口を設けた場合です。これは「ピロティ構造」と呼ばれ、1階部分の耐震性が著しく低下するため、設計上の補強が必要になります。

次に、使用する建材についても、耐震性に大きな影響を与える要素です。近年では、無垢材よりも集成材の方が、耐震性の観点で優れているとされることが多くなっています。集成材は乾燥や圧力に強く、均一な強度を持っているため、構造部材としての安定性が高いのが特徴です。これに加えて、構造用合板や高耐力パネルなどを併用することで、壁面全体の剛性を高めることができます。

また、耐震金物の使用も重要なポイントです。柱や梁、土台などの接合部は、地震の際に最も大きな力が集中する場所です。ここに補強金物を使って接合強度を高めることで、部材のズレや破断を防ぐことができます。特にプレカット工法(工場での精密加工)と金物工法を組み合わせることで、現場の施工精度を高め、施工ミスを防止する効果も期待できます。

そしてもう一つ、意外と見落とされがちなのが「基礎構造の設計」です。地震の力は地盤から建物に伝わるため、その受け皿となる基礎が弱ければ、どれほど強固な建物を建てても意味がありません。地盤調査に基づいた基礎設計を行い、鉄筋コンクリートのベタ基礎を採用することで、不同沈下や基礎の割れなどを防ぎ、建物全体の安定性を確保することができます。

これらの工夫を重ねていくことで、建物は「建築基準法を満たす家」から「地震後も住み続けられる家」へと進化していきます。設計士や施工会社と十分に話し合いながら、耐震性能を最優先に据えた家づくりを行うことで、家族の安心・安全は確かなものになるでしょう。木造住宅であっても、設計と建材の工夫によって、高い耐震性能を実現することは十分に可能なのです。

木造住宅を建てる前に確認しておきたい地盤と施工会社のポイント

地震に強い木造住宅を建てるためには、建物自体の設計や構造だけでは不十分です。実は、建物を支える地盤の強さ施工会社の信頼性が、耐震性能に直結する非常に重要な要素であることをご存じでしょうか。どんなに強固な構造の住宅を設計しても、軟弱な地盤の上に建っていたり、施工の品質に問題があったりすれば、耐震性は大きく損なわれてしまいます。だからこそ、家づくりの最初の段階から、この2つの視点を意識する必要があります。

強固な地盤かどうかのチェックポイント

まず最初に確認すべきは、建築予定地の地盤が安全かどうかです。日本は地質が非常に複雑で、数十メートル先でも地盤の性質が大きく異なるケースがあります。特に、埋立地・旧河川跡・低湿地帯などは、軟弱地盤である可能性が高く、大地震の際に液状化現象や不同沈下が起こる危険性があります。

住宅を建てる前には、必ず「地盤調査」を実施することが基本です。スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)などの方法を用いて、地盤の硬さや支持力を測定します。この調査結果に基づいて、地耐力が十分であれば通常の基礎工事を、地耐力が不足していれば地盤改良工事や杭基礎といった対策を講じることになります。

調査報告書では、「N値」や「地耐力」という数値が重要な指標となります。一般的に住宅用の地盤としては、N値が5以上、地耐力が30kN/㎡以上が望ましいとされています。もし数値がこれよりも下回る場合は、適切な補強なしに住宅を建てると、地震時に建物が傾いたり沈下したりするリスクが高まります。

また、ハザードマップを活用して、過去の地震や洪水被害の履歴、液状化リスクの有無も確認しておくと良いでしょう。建てる場所の“地盤の履歴”を知ることは、安全な家づくりの出発点です。

信頼できる施工会社を見極める方法

どれだけ優れた設計であっても、それを現場で正確に実現できなければ意味がありません。だからこそ、信頼できる施工会社を選ぶことが、地震に強い家を建てるうえで極めて重要です。見た目が整っている建物でも、内部の構造や接合部に手抜きがあれば、いざという時に崩壊する危険があります。

信頼できる施工会社を見極めるには、いくつかのチェックポイントがあります。まず、「構造計算(許容応力度計算)」を実施しているかを確認しましょう。木造住宅では簡易な「壁量計算」のみで設計されることもありますが、構造計算まで行っている会社の方が、耐震性に対する意識が高いといえます。

次に、「耐震等級3」や「長期優良住宅」の実績があるかも重要なポイントです。これらは、国の定める基準を満たしている住宅であり、安心材料として有効です。実際の施工事例を見学させてもらったり、現場監督や大工の技術力・経験年数を尋ねたりすることも有益です。特に、過去に地震被害を経験していない住宅でも、設計図と実際の施工が一致していなければ、安全性は確保されません。

また、工事中の「第三者検査」を取り入れている会社であれば、さらに安心です。第三者機関による構造チェックや施工品質の検査が入ることで、施工ミスや欠陥のリスクを大幅に減らすことができます。

さらに、住宅完成後の「アフターサポート体制」も見落とせません。万が一の地震後にどれだけ迅速に対応してくれるか、定期点検や無償修理の期間などを事前に確認しておくことで、長期的な安心につながります。

信頼できる施工会社は、単に建てるだけでなく、建てた後の暮らしにも責任を持ちます。家づくりのパートナーとして、しっかりとした対話を重ねながら、自分の理想や不安を丁寧に汲み取ってくれるかどうかを見極めることが大切です。

木造住宅の耐震を見極め安心して暮らすために

大切な家族と安心して暮らすためには、「この家は本当に地震に耐えられるのか?」という視点を持つことが欠かせません。特に地震が頻発する日本においては、住宅の耐震性は単なる設計上のオプションではなく、生活を守るための前提条件といっても過言ではありません。木造住宅は古くから親しまれてきた構造ですが、正しい知識と適切な対応がなければ、その安全性は十分に発揮されない可能性があります。

まずは、自分の住まいがどのような構造・工法で建てられているか、耐震基準はどこまで満たしているかを把握することが第一歩です。特に築年数の経った住宅は、旧耐震基準のままになっていることも多く、見た目はきれいでも構造上は大きなリスクを抱えていることがあります。このような場合は、専門家による耐震診断を受け、必要に応じて補強工事を検討しましょう。

また、新築住宅を検討している方にとっては、建築基準法を満たすだけでなく、耐震等級2や3を目指すことが重要です。さらに、構造設計だけでなく、使用する建材や金物の種類、施工精度、そして信頼できる施工会社の選定など、多角的な視点で判断する必要があります。これらの一つひとつの要素が、総合的な耐震性を構成しているのです。

そしてもう一つ見落とされがちなのが、暮らしの中での備えです。いくら構造が強くても、家具が固定されていなかったり、避難経路が確保されていなかったりすれば、被害を最小限に抑えることはできません。住宅の耐震性を高めることに加えて、日常の中でできる防災対策も併せて行うことが、本当の意味での「地震に強い暮らし」につながります。

木造住宅は、適切に設計・施工され、必要なメンテナンスや補強が行われていれば、非常に高い耐震性を持つことができます。しかし、その性能を最大限に引き出すには、住む人自身が関心を持ち、必要な知識を持って判断していくことが求められます。家は建てて終わりではなく、住み続ける中で守っていくものです。

地震に備えた住宅選び・暮らし方は、家族の安全と未来への投資です。木造住宅の耐震性を正しく見極め、必要な対策を行うことで、どんな災害が起きても揺るがない、安心できる生活基盤を築いていきましょう。

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