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住宅性能評価の基本からメリットデメリットまで全体像を理解しよう

住宅は、人生で最も大きな買い物のひとつです。外観や間取りだけでなく、その住宅が本当に安全で快適な住まいかどうかを知るためには、目に見えない「性能」を正しく理解することが欠かせません。

そんなときに役立つのが「住宅性能評価制度」です。

この記事では、住宅性能評価の概要から評価項目、取得の流れ、メリット・デメリットまで、制度の全体像を詳しく解説します。

住宅性能評価とは?

住宅性能表示制度は、「住宅性能評価制度」とほぼ同義であり、住宅の性能を明確に数値や等級で表示し、誰でも比較検討できるようにした制度です。簡単にいえば、住宅の性能に「ものさし」を与えた仕組みだといえるでしょう。

この制度の特徴は、性能項目が細かく分類され、国が定めた評価基準に基づいて等級をつけられる点です。評価対象となるのは、「構造の安定性」「火災時の安全性」「温熱環境」「劣化の軽減」など10項目で、それぞれに等級1〜等級3、またはそれ以上のレベルが設定されています。

例えば「耐震性が等級3」と表示されていれば、現行の建築基準法を超える高い耐震性能を持っていると判断できます。

また、この制度は任意でありながら、多くの大手ハウスメーカーや地場の工務店が導入しており、ローン審査の優遇や住宅保険の割引においても高評価物件が有利になる傾向があります。

住宅性能評価書の評価項目

1 構造の安定

住宅における「構造の安定」とは、主に地震や風圧などの外力に対して建物がどれだけ安全性を保てるかを評価する項目です。特に日本は地震大国であり、この性能が住宅選びにおける最重要ポイントになることも少なくありません。

構造の安定性は「耐震等級」という指標によって示され、等級1〜等級3の三段階に分けられています。等級1が建築基準法レベル、等級2はその1.25倍、等級3は1.5倍の強度を持つ設計となります。たとえば等級3は、警察署や消防署などの防災拠点施設と同等の耐震性を持っているということです。

2 火災時の安全

「火災時の安全」は、住宅内外で火災が発生した際の延焼防止や避難のしやすさを評価する項目です。都市部の住宅密集地では、火災による被害が拡大しやすく、命を守る上でこの性能は極めて重要です。

評価内容は、隣接住戸との「遮炎性能」や、住宅内部の「避難経路の確保」、および「火災感知器の設置状況」など多岐にわたります。

さらに、隣家との間に防火構造の壁やサッシを設けているかといった点も重要です。建物同士が近接している地域では、この遮炎性能が延焼防止に直結し、自分だけでなく周囲の家の安全にも影響を及ぼします。

3 劣化の軽減

「劣化の軽減」は、そうした劣化をできるだけ防ぎ、建物の寿命を延ばすための工夫や仕様を評価する項目です。

評価対象となるのは、主に構造躯体(基礎・柱・梁・床など)を中心とした部分です。特に湿気は木造住宅にとって劣化の大敵であり、防湿シートの有無や換気口の配置もチェックポイントになります。

等級が高い住宅は、一般的な使用状態であっても数十年間にわたって構造部分の耐久性を維持できる設計が施されています。

劣化を抑える工夫がなされた住宅は、単に長く住めるだけでなく、資産価値の維持にもつながる重要な要素です。

4 維持管理への配慮

「維持管理への配慮」は、そうした将来的なメンテナンスのしやすさや、住宅設備の更新時の利便性を評価する項目です。

この評価項目は、今すぐの利便性よりも「将来の安心」を支える要素といえます。

また、この項目で高い評価を受けている住宅は、将来的な売却時にも「メンテナンス性が高い住宅」としてプラス評価を受けやすく、資産価値にも好影響を与えるでしょう。

住宅性能評価を受けることで得られるメリットとデメリット

メリット:住宅購入の安心材料になる

住宅は人生で最も大きな買い物といっても過言ではありません。購入後に後悔しないためには、その住宅が「本当に安全で快適な住まいか」を見極めることが重要です。ここで役立つのが住宅性能評価です。

住宅性能評価を受けた住宅は、国の基準に沿って第三者機関が性能を確認し、「見える化」された状態で提示されています。評価項目ごとに等級が示されているため、素人でも住宅の質を客観的に判断しやすくなります。

また、住宅ローンを組む際にも評価書は有利に働く場合があります。加えて、地震保険料が割引になるといった経済的メリットも見逃せません。

さらに、評価書は将来的な売却時にも役立ちます。買主にとって性能の証明がある住宅は安心材料となり、他の物件との差別化要因になります。

デメリット:評価取得にはコストや調整が必要

最も明確なデメリットは、評価取得にかかる「費用」です。設計住宅性能評価と建設住宅性能評価の両方を取得しようとすると、10万円〜20万円程度のコストが発生するのが一般的です。

次に、住宅の仕様や設計に対する「制約」が生じる点も見逃せません。例えば、「断熱性能の等級を上げたい」と思えば、断熱材や窓ガラスのグレードアップが必要になり、それに伴って建築費用も増加します。また、ある性能を上げることで別の性能と相反してしまうこともあります。

さらに、評価のための手続きや検査には時間がかかることもあり、完成・引き渡しまでのスケジュールに影響を及ぼす場合があります。

このように、住宅性能評価は確かに大きなメリットを持つ一方で、コスト、設計上の調整、スケジュールへの影響といった面でデメリットも存在します。

新築住宅の住宅性能評価では10分野が対象

新築住宅は10の性能項目が評価対象

新築住宅における住宅性能評価では、10項目の性能について第三者機関が詳細に評価を行います。この評価は、購入者にとって「安全性」「快適性」「維持のしやすさ」といった、暮らしに直結する重要な判断材料となります。

具体的な評価項目は以下の通りです。

  1. 構造の安定(耐震性能)
  2. 火災時の安全
  3. 劣化の軽減(長寿命化)
  4. 維持管理への配慮(メンテナンス性)
  5. 温熱環境(断熱性能、エネルギー効率)
  6. 空気環境(ホルムアルデヒドなどの濃度)
  7. 光・視環境(採光や眩しさの抑制)
  8. 音環境(遮音性)
  9. 高齢者等への配慮(バリアフリー性能)
  10. 防犯(玄関や窓の防犯性能)

これらの項目は、それぞれの専門分野に基づいて等級が付けられ、たとえば「耐震等級3」や「温熱環境等級5」といった具合に、性能が数値化されます。

このように、住宅性能評価の10分野は、住宅購入者が「見えない住宅の質」を数値と基準で確認できる強力なツールであり、これから家を建てる、あるいは購入する人にとって非常に意義のある情報と言えるのです。

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中古住宅の住宅性能評価は現況に応じた評価

売却を見据えた住宅性能評価の活用方法

住宅性能評価は購入時に役立つだけでなく、中古住宅の「売却時」にも非常に有効な手段となります。特に住宅市場においては、築年数だけでは測れない「中身の良さ」を客観的に示せる材料が少なく、性能評価書の存在が売却成功の鍵を握ることもあります。

売却を予定している場合、事前に住宅性能評価を取得しておくことで、購入希望者に対して「信頼性のある情報提供」が可能になります。

また、評価書があることで、購入後のトラブルリスクを低減できる点もメリットです。評価書には検査機関による現地調査結果や劣化箇所の指摘なども含まれるため、「契約前に把握すべき情報」が明示された状態での取引が可能になります。

さらに、住宅性能評価を取得した物件は、他の類似物件と差別化しやすくなります。買主が安心して購入できる住宅には、価格の面でも一定のプレミアムがつくケースがあり、結果的に早期売却や高値売却につながることも少なくありません。

このように、住宅性能評価は中古住宅の「付加価値」として非常に強力なツールであり、売却戦略の中核として活用することが望ましいのです。

住宅性能評価の申請から取得までの流れを把握しよう

住宅性能評価を取得するための最初のステップは、住宅性能評価を実施している「登録住宅性能評価機関」に相談することです。

これらの機関は、国に登録されており、各地域に存在しています。まずは電話やウェブサイトから問い合わせを行い、自分の住宅の条件に合った評価の可否、必要な書類、費用などを確認します。

次に行うのが「申請書類の準備と提出」です。新築の場合は設計図面や仕様書、中古住宅では現況を示す図面や写真、点検記録などが必要になります。これらを揃えたうえで、評価機関に正式な申請を行います。

申請後は、設計住宅性能評価であれば「設計図面に基づく書類審査」、建設住宅性能評価では「建築現場での検査」が行われます。現場検査は複数回に分けて実施されることがあり、主に基礎工事完了時、中間検査(上棟時など)、完成時にチェックされます。

全ての審査・検査をクリアすると、「住宅性能評価書」が交付されます。設計段階では「設計住宅性能評価書」、建設完了後には「建設住宅性能評価書」として発行され、いずれも正式な公的証明書として機能します。

全体の流れは、書類の準備や検査スケジュールにもよりますが、設計評価で2〜3週間、建設評価では1〜2ヶ月程度が目安です。スムーズな取得のためには、設計段階から評価取得を見据えて準備することが重要です。

住宅性能評価書の取得には費用がかかるのか?

評価書の取得費用と交付割合の実情

住宅性能評価書の取得にかかる費用についてですが、評価には2種類あります。

設計評価のみを取得する場合は、5万〜10万円程度が目安です。一方、建設評価も併せて取得する場合には、合計で10万〜20万円程度になることが一般的です。住宅の規模や構造、地域、評価機関によって差が生じるものの、これが概ねの相場といえます。

この費用は、住宅ローンや火災保険の割引、将来的な資産価値の向上などのメリットを考慮すれば、決して高額な支出ではありません。

では、実際にどの程度の住宅がこの評価書を取得しているのでしょうか。国土交通省の資料によると、2023年時点で新築分譲住宅の約40%が何らかの形で住宅性能評価書を取得しています。

つまり、住宅性能評価書の取得には一定の費用がかかるものの、その内容と将来的な効果を考慮すれば、住宅購入における合理的な投資と捉えることができます。

住宅性能評価書に関するよくある質問

Q.評価書の取得義務はある?

住宅性能評価書は、「義務」ではなく「任意」で取得する制度です。つまり、住宅を建てたり購入したりする際に、必ず取得しなければならないものではありません。しかし、評価書があることで得られるメリットは非常に大きいため、多くの住宅事業者や購入者が積極的に活用しています。

Q.評価書はいつもらえる?後からでも取れる?

住宅性能評価書の交付タイミングは、評価の種類によって異なります。「設計住宅性能評価書」は建築確認申請と並行して設計図面を基に評価が行われるため、建築着工前に取得できます。

一方、「建設住宅性能評価書」は、実際の建設現場の検査が必要となるため、建物が完成した後、すべての検査が完了してからの交付となります。

このように、住宅性能評価書の取得タイミングは住宅の状態によって異なりますが、状況に応じて柔軟に対応することができます。新築・中古問わず、早めに評価取得を検討するのが賢明です。

Q.建設住宅性能評価書とBELS評価書との違いは?

両者の違いを一言でいえば、建設住宅性能評価書は「住宅全体の性能評価」、BELSは「省エネ性能の専用評価」です。

建設住宅性能評価書は、住宅性能表示制度に基づき、耐震性・劣化対策・断熱性・防犯など住宅全体の性能を網羅的に評価するものです。

一方、BELS評価書は、建築物の省エネルギー性能に特化した評価制度です。BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)は建築物の一次エネルギー消費量を基に評価を行い、星1〜5つの等級で表示します。

住宅の購入者にとっては、どちらも有用な情報源ですが、目的に応じて評価書の種類を選ぶことが大切です。両方を取得している住宅は、まさに高性能住宅の証といえるでしょう。

住宅性能評価を正しく理解して安心できる住まいを選ぼう

住宅を購入するという行為は、金銭的にも精神的にも大きな決断を伴います。その中で、外観や間取りといった“見える部分”だけでなく、“見えない部分”である住宅性能にも注目することが、安全で快適な暮らしへの第一歩となります。

住宅性能評価では、耐震性や断熱性、劣化対策、バリアフリー性、防犯性能など、暮らしに直結する10分野にわたる性能が、国の基準に基づいて第三者機関によって評価されます。

住宅性能評価とは「安心して暮らせる住まいを選ぶための情報の土台」です。見た目や価格だけでなく、住宅の中身にも目を向けてこそ、本当に満足のいく住まい選びが実現します。

これから住宅購入を検討する方は、ぜひ住宅性能評価制度を上手に取り入れ、後悔のない選択をしていただきたいと思います。

SOSHIN HOME CRAFTは、滋賀県で地震に強い家づくりを得意としている工務店です。耐震等級3の建物をこれまで多く建築してまいりました。

地震大国、日本において地震対策をしていない家づくりは、非常に危険です。

地震に強い家の特徴を、滋賀県で家を建てようとされている方向けにお伝えしております。気になる方は、是非一度以下のリンクから知ってもらえたら幸いです。

>>SOSHIN HOME CRAFTの家づくり

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著者について

Nobuo Nakatsu

多業種で経営・営業を歴任し、国際的なマネジメント経験を持つ住宅コーディネーター。
現在はSOSHIN HOME CRAFTにて建築分野の専門性を高め、性能・デザイン・価格の最適バランスを追求。
建築・古民家・ファイナンスの資格を活かし、確かな知識と実践力で理想の住まいづくりを提案しています。

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