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【徹底解説】いざという時に備えるために!住宅の耐震化率を高める必要性

大規模な地震がいつどこで発生してもおかしくない状況の中、私たちの命と生活を守るうえで「住宅の耐震化」は非常に重要なテーマです。中でも注目すべきなのが「住宅の耐震化率」という指標です。

この数値は、全国に存在する住宅のうち、耐震基準を満たしている住宅がどれだけあるかを示すもので、災害への備えの現状を客観的に示すものでもあります。

この記事では、住宅の耐震化率の基本的な知識から、現状の課題、工務店や行政の役割、今後の技術的な展望までを多角的に解説していきます。「自宅は本当に地震に耐えられるのか?」「どこから手をつければいいのか分からない」と感じている方にとって、行動のきっかけとなる情報をわかりやすく、具体的にお届けします。

住宅の耐震化率とは?

住宅の耐震化率とは、現在存在する住宅の中で、現行の耐震基準を満たしている住宅の割合を示す指標です。日本では1981年に建築基準法が改正され、新たに「新耐震基準」が導入されました。これ以前に建てられた住宅は「旧耐震基準」に基づいており、現在の耐震性能を満たしていないとされています。つまり、築年数の古い住宅ほど、地震の際に倒壊のリスクが高いということです。

国土交通省のデータによれば、全国の住宅の耐震化率はおよそ90%に達しつつありますが、この数字はあくまで全国平均であり、地域ごとの格差は非常に大きいのが現状です。

地域による耐震化率の違い

特に地方や過疎地、高齢化が進んだ地域では、1981年以前に建てられた住宅が数多く残っており、耐震改修も進んでいないケースが目立ちます。

さらに、耐震化率が高いからといって、それで完全に安心できるわけではありません。耐震性能は住宅の構造や材質、基礎の状態などによっても左右されます。

また、耐震化された住宅であっても、家具の固定がされていなかったり、周囲の住宅が倒壊した際に巻き込まれるリスクも存在します。

つまり、「耐震化率が高い地域に住んでいるから大丈夫」と安心するのではなく、自分の住まいが本当に地震に強い構造になっているのかを個別に確認し、必要な対策を講じることが重要なのです。

地震はいつ、どこで起きるか予測が難しく、「備えておけばよかった」では遅すぎます。耐震診断を受けること、必要であれば補強工事を行うこと、それが自分や家族の命を守る最も確実な手段となります。

たとえば、耐震化率が低い地域に対しては、行政が無料の耐震診断や補助金制度を提供することによって、住宅の耐震性能の向上を促しています。個人の取り組みに加えて、行政と連携した地域全体での耐震化促進が、災害に強い社会づくりには欠かせません。

耐震診断が義務付けられた建築物の耐震化率の現状と課題

まず、耐震診断が義務付けられているのは、主に昭和56年(1981年)以前に建築された一定規模以上の建物です。

具体的には、病院・学校・老人福祉施設など、不特定多数が利用する公共性の高い建築物や、避難所に指定されている施設が該当します。これらの建物が地震によって倒壊するような事態があれば、地域の防災機能は一気に失われ、多くの命が危険に晒されることになります。

こうした背景を受け、国や自治体は耐震診断の実施を義務づけ、結果の報告を求める法制度を整えてきました。ところが、実際にはすべての対象施設が診断を受け、適切な改修を済ませているわけではありません。

特に地方の小規模自治体においては、建物の所有者が公的機関ではなく民間法人である場合、改修の判断が難航しやすくなります。また、耐震診断結果の公表に対する心理的ハードルも根強く、施設利用者に不安を与えることを懸念して公開をためらう事例も報告されています。これにより、診断は行われたものの、その先の対応が滞るという悪循環が生まれています。

耐震診断は戦略的

耐震診断の義務化は、単なる法制度の一環ではなく、地域全体の安全性を底上げするための戦略的施策です。

現時点では診断実施率・耐震化率ともに全国平均で100%にはほど遠く、今後さらに対策の強化が求められます。診断対象となる建物の管理者は、法令遵守だけでなく「地域の命を預かる責任がある」という意識を持ち、耐震化に積極的に取り組むことが求められます。

私たち一人ひとりもまた、子どもが通う学校や家族が入院する病院が、耐震的に安全かどうかを知る権利があります。行政や施設管理者に対して情報開示を求めたり、地域の防災意識を高める活動に参加したりすることも、社会全体の耐震化率向上につながる大切なアクションです。

耐震診断の義務化は、単なるチェックリストではなく、人命を守るための実践的なプロセスです。その重要性を再認識し、診断の実施とその後の確実な対応を社会全体で支援していく必要があります。

戸建て住宅の耐震化率の全国平均

現状では、全国の戸建て住宅における耐震化率は地域差が大きく、特に地方では未だ多くの住宅が旧耐震基準のままで放置されているのが実情です。

国土交通省の調査によると、全国平均の住宅耐震化率は約90%に近づいていますが、この数値はマンションや集合住宅、公共施設などを含めた全体の平均値です。

耐震化が進まない理由はさまざまありますが、最大の障壁は費用の問題です。耐震改修には数十万円から数百万円の費用がかかることもあり、高齢の世帯主や年金生活者にとっては大きな負担となります。また、耐震化の必要性を理解していても、「いつ地震が来るかわからない」「工事が面倒」といった心理的な壁が行動を妨げているのも事実です。

自治体ごとの取り組み状況

こうした課題に対応するため、全国の自治体では様々な支援策を講じています。

たとえば、東京都や静岡県などの先進地域では、耐震診断を無料で提供したり、耐震改修費用の最大80~90%を補助する制度を設けたりしています。こうした手厚い支援策がある自治体では、住民の関心も高く、実際に耐震化率が着実に向上しています。一方で、財政に余裕がない自治体では、支援が限定的にならざるを得ず、耐震化が進みにくい傾向があります。

また、自治体によっては「ブロックごとに耐震診断を一斉に行う」など、地域単位での取り組みも行われています。これは、個別の申し込みに任せるのではなく、自治体主導で診断を進めることで、地域住民の防災意識を一斉に高める効果があります。

工務店との連携

もう一つの有効な取り組みが、地元の工務店や建築士会との連携です。行政だけでは人手も予算も限られており、全ての住宅に目が行き届くわけではありません。

そこで、地元の専門業者が協力し、耐震診断から工事までを一括でサポートする体制が求められています。こうした地域密着型の体制づくりは、住民との信頼関係を築きやすく、結果的に実行力のある耐震化活動へとつながります。

国としても、耐震化率のさらなる向上を目指して、「住宅・建築物安全ストック形成事業」などの制度を通じて、自治体の取り組みを後押ししています。しかし、制度があっても活用されなければ意味がありません。情報が届いていない、申請が複雑、手続きが煩雑といった理由で、せっかくの制度が十分に活用されていない現状も課題の一つです。

最終的に、戸建て住宅の耐震化率を向上させるためには、「情報」「費用」「人手」の3つのハードルを下げることが鍵となります。

そして、その取り組みを支えるのが自治体と地域の専門家による持続的な協働です。耐震化率は、行政の努力だけで上がるものではなく、地域住民一人ひとりの理解と行動にかかっています。

地震は待ってくれません。今、目の前の一軒一軒の住宅がどれほど安全かを見直すことこそ、未来の命を守る確かな備えなのです。

住宅の耐震化率を上げるために工務店が果たすべき役割とは

住宅の耐震化率を高めるうえで、工務店が果たす役割は極めて重要です。

なぜなら、工務店は地域の住まいづくりの最前線に立ち、住民と直接関わりながら住宅の建築・リフォームを行っている存在だからです。耐震化の必要性が叫ばれる中、工務店は単に「家を建てる」だけでなく、「命を守る建築」を提供する専門家としての責任を果たすことが求められています。

多くの人にとって、耐震についての知識は決して豊富とは言えません。特に築年数の経った住宅に住む高齢者層は、「うちは昔から大丈夫だった」「耐震工事なんて高くて無理」といった先入観や不安を持っていることが多いです。

そうした住民に対して、耐震の重要性や現実のリスク、工事の方法や補助制度の活用までをわかりやすく説明し、安心して判断できる材料を提供できるのが、地域密着型の工務店なのです。

また、耐震リフォームの具体的な技術や方法についても、工務店はプロとしての知見を活かすことができます。壁の補強や基礎の改修、屋根材の軽量化など、多くの耐震技術が存在しますが、これらを住まいの現状に合わせて提案し、丁寧に施工できるのが地場の工務店の強みです。

さらに、工務店が果たすべきもう一つの役割は、自治体や専門機関との連携です。多くの自治体では耐震診断の無料提供や改修費用の補助金制度を用意していますが、住民が自力で申請手続きを行うのは非常に煩雑です。

そこで、工務店が診断の申請や補助金の手続きまでを一括してサポートすることで、耐震化の実現性が飛躍的に高まります。実際に、こうしたトータルサポート体制を整えた工務店では、受注率の向上と地域からの信頼獲得を同時に実現しています。

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行政と連携した住宅の耐震化促進活動の展望と可能性

住宅の耐震化を全国的に推進していくには、行政との連携が不可欠であり、行政主導での支援制度と、地域の工務店や建築士の技術・経験を融合させることで、より効率的で持続可能な耐震化の取り組みが実現します。

行政が果たすべき役割は、大きく3つあります。

第一に、耐震診断の制度整備と実施の推進です。地方自治体の中には、無料で耐震診断を提供する制度を設けているところもありますが、住民がその制度自体を知らないケースも多く存在します。

第二に、改修工事への補助金制度の充実と柔軟な運用が必要です。多くの自治体では、耐震改修に対して費用の一定割合を補助する仕組みがありますが、対象となる工事内容が限定されていたり、補助上限が低すぎると実際にはあまり役に立たないというケースもあります。

第三に、地域全体での耐震化推進に向けた啓発活動や仕組みづくりです。また、小中学校での防災教育や、防災イベントなどに耐震化の重要性を盛り込むことで、将来を担う世代の意識向上にもつながります。

住宅の耐震化は、一部の人の問題ではなく、地域全体の安全と安心に直結する社会的課題です。

だからこそ、行政と民間が垣根を越えて協力し合うことが、真の解決につながります。行政が制度という「仕組み」を作り、民間が「実行力」でそれを動かす。

地域ごとの地震リスクに応じた耐震化率向上の戦略を考える

地域特性を無視して一律の耐震化対策を講じるのではなく、それぞれの地域に即した戦略を立てることが、耐震化率を効率的かつ効果的に向上させる鍵となります。

地震リスクが高い地域では、当然ながら住民の防災意識も高く、耐震化に対する関心や行動意欲も比較的強い傾向にあります。こうした地域では、すでに制度は整っているため、次の段階としては「より質の高い耐震化」や、「制震・免震との組み合わせ」など、性能向上型の提案が有効です。

一方で、これまで大きな地震が起きた経験が少ない地域では、防災意識が低く、耐震化の必要性が十分に伝わっていない現状があります。地震が起きてからでは遅く、過去に地震がなかったからといって今後も起きない保証はないことを、統計やシミュレーションを交えて丁寧に伝えていくことが必要です。

都市部と地方の違い

また、都市部と地方でもアプローチは異なります。都市部では新築住宅が多く、すでに耐震基準を満たしている場合が多いですが、集合住宅や中小ビルの耐震性にはまだ課題があります。

逆に地方では、古い木造住宅が密集している地域も多く、個人所有の住宅が耐震化されないまま残っていることが多いのです。このような地域では、住民一人ひとりに向けた個別対応が効果的であり、工務店や地域の建築士による戸別訪問や、ブロック単位での耐震診断キャンペーンなどが成果を上げています。

今後の耐震化施策を効果的に進めるには、地域のハザード情報をベースにした「優先度設定」が不可欠です。全戸一律に耐震診断・改修を進めるのではなく、地震リスクが高く、建物の老朽度も進んでいるエリアから優先的に対応することで、限られた予算や人材を効率よく活用できます。

地域特性に即した戦略を描くことは、単なる防災施策ではなく、地域の命と暮らしを守るための本質的な取り組みです。

地震に備える住宅設計の未来と耐震化技術の進化

これからの時代に求められる住宅は、「快適さ」や「デザイン性」だけではなく、「安全性」という視点を最優先に考える必要があります。特に日本のように、いつどこで大地震が発生してもおかしくない国においては、住宅の耐震性は命を守る最後の砦です。

これまでの耐震技術は、いわば「強くすること」が基本でした。建物そのものが地震の力に耐えられるように設計され、筋交いや金物補強などで建物の剛性を高める手法が主流でした。しかし、巨大地震においては、建物の剛性だけでは揺れを吸収しきれず、倒壊には至らなくても内装の破損や家具の転倒など、生活への被害が大きくなることがあります。そこで登場したのが「制震技術」です。

制震装置は、建物にかかるエネルギーを吸収・分散する役割を果たします。たとえば、制震ダンパーは建物の内部に設置され、揺れを機械的に減衰させることで、建物全体へのダメージを大幅に軽減します。

また、さらに先進的な技術として注目されているのが「免震構造」です。もともとは高層ビルや公共施設などに多く採用されていましたが、近年では戸建て住宅にも対応できる小型化・低価格化が進んでおり、富裕層を中心に導入が始まっています。

免震住宅は揺れを大幅に抑えることができるため、家具の転倒や配管の破損などの二次被害を最小限に抑える効果があります。

こうした技術の進化は、住宅の設計思想そのものにも影響を与えています。これまでのように「間取り」や「外観」が主役だった設計から、「安全性を前提としたプランニング」が重視されるようになっています。

一方で、これらの最新技術がすぐに全国すべての住宅に適用できるかというと、現実はまだそこまで追いついていません。コストや導入の手間、既存住宅への適応性など、いくつかの課題が残っています。

未来の住宅は、住む人の命を守るだけでなく、「その後の生活」まで見据えた設計が求められます。大地震が発生した際にも、自宅で安心して過ごせる、あるいはすぐに復旧できる住宅。それが今後の住宅における新たなスタンダードです。

耐震構造については、別の記事で紹介していますので、あわせてお読みください。

関連記事:【地震に負けない家】必要な耐震構造の知識を身につけよう

まとめ

住宅の耐震化率という言葉は、私たちの暮らしに直接関係しているにもかかわらず、日々の生活の中で深く意識されることは少ないかもしれません。

現状、日本の住宅耐震化率は全国平均で約90%に近づいているとされますが、この数字には地域差が大きく、都市部と地方、また新築と既存住宅では大きな開きがあります。特に築40年以上経過した木造住宅では、今なお旧耐震基準のまま放置されているケースが多く、震災時に倒壊のリスクが高いとされています。

耐震化率の向上は、国や自治体だけの取り組みではなく、私たち一人ひとりの関心と行動によって達成されるものだということです。今日からでも始められる小さな行動が、明日の安全と安心につながります。

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著者について

Nobuo Nakatsu

多業種で経営・営業を歴任し、国際的なマネジメント経験を持つ住宅コーディネーター。
現在はSOSHIN HOME CRAFTにて建築分野の専門性を高め、性能・デザイン・価格の最適バランスを追求。
建築・古民家・ファイナンスの資格を活かし、確かな知識と実践力で理想の住まいづくりを提案しています。

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